前回、前々回に引き続き、「就活会議」(株式会社リブセンス)とHR総研が共同で実施した、2021年卒学生を対象とする「就職活動とインターンシップ」に関する意識調査の結果を報告する。3回目となる今回は、「2021年卒学生の就職意識調査 第2弾(就職したい企業の志向等)」。
インターンシップへの参加や就活ナビでの情報収集等、就職活動を始めている学生が多い中、学生が志望する企業を選定する際の条件には、どのような傾向が見られるのだろうか。また、今後の社会人人生について、どのようなイメージを抱いているのだろうか。
ここでは、調査時点である11月初旬における2021年卒学生について、「就職したい企業の規模」「就職意識(転職志向の有無)」「志望する業界・敬遠する業界」等について分析した結果を、学生のフリーコメントも含めて以下に紹介する。

<概要>
●依然として高い大手志向、理系は8割を占める
●将来的に「転職・起業を想定する割合」は6割以上、特に理系の転職志向が高まる
●「社員の働き方」に学生の9割以上が関心を示す、最大関心事は「長時間労働の是正」
●「地元就職への興味」を持つ学生は約半数、比較的文系に多い傾向
●「就職を希望する企業として重要視する条件」は「福利厚生」がトップで半数以上、
 志向別の特徴あり
●「志望する業界」理系のトップは「情報処理、システム開発」、IT人材へのニーズの高まりが影響か
●「就職したくない業界」は「外食」がトップに戻る、理系はさらなる金融業界離れか
●「面接選考へのAI活用」に半数以上が「反対」、客観性や合理性を評価する意見もあり

依然として高い大手志向、理系はさらに高まり8割

「就職先として希望する企業規模」については、文系では「できれば大手企業に行きたい」が最多で49%、次いで「企業規模は問わない」が24%、「絶対大手企業に行きたい」が14%などとなっており、理系でも「できれば大手企業に行きたい」が最多で59%、次いで「絶対大手企業に行きたい」が20%、「企業規模は問わない」が19%などとなっている(図表1)。
大手志向の学生の割合(「絶対大手企業に行きたい」と「できれば大手企業に行きたい」の合計)は、文系63%、理系79%となっており、昨年調査と同様に大手志向が強く、特に理系については大手志向の割合が高まり、8ポイント増加している。

【図表1】文理別 就職先として希望する企業規模

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「転職・起業の可能性を想定している割合」は6割以上、特に理系の転職志向が高まる

学生の「就職意識」については、文系では「最初の会社で定年まで働きたい」が42%で最多であり、次いで「回数にこだわらず、転職してもよい」が31%、「3回くらいまでなら転職してもよい」が23%などとなっている。理系では「3回くらいまでなら転職してもよい」が43%で最多であり、次いで「最初の会社で定年まで働きたい」が29%、「回数にこだわらず、転職してもよい」が24%などとなっている(図表2)。「転職・起業の可能性を想定している割合」(「3回くらいまでなら転職してもよい」~「いずれは起業したい」の合計)は、文系では6割(58%)、理系では7割(71%)に上ることが分かる。特に理系の専門的な職種の人材は、転職によりキャリアアップを図る傾向が高まる中、転職を当たり前のことと考えていることがうかがえる。

【図表2】文理別 就業意識(転職・起業への意識)

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「社員の働き方」に学生の9割以上が関心を示す、最大関心事は「長時間労働の是正」

「社員の実際の働き方への関心」については、「非常に関心がある」が75%で圧倒的であり、次いで「やや関心がある」が19%などとなっている(図表3-1)。これらを合計すると、94%の学生が社員の実際の働き方に関心を持っていることが分かる。だからこそ、実際の職場を見られるインターンシップへの参加は、就活生にとって有意義な体験であるだろう。
では、社員の働き方を「働き方改革」という観点で見ると、学生は、どのような項目に関心を持っているのだろうか。

【図表3-1】社員の実際の働き方への関心

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「働き方改革で気になる項目」については、「長時間労働の是正」が55%で最多であり、次いで「有給休暇の取得促進」が53%、「仕事と家庭の両立支援制度」が43%などとなっている(図表3-2)。マスコミによる報道等の影響を受けていることが考えられ、従業員のワークライフバランスへの配慮とも言える項目に、学生の関心が高い傾向にある。
では、具体的にどの程度の残業時間であれば許容できると考えているのだろうか。

【図表3-2】「働き方改革」で気になる項目

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「許容できる残業時間」については、文系では「月30時間くらいまでの残業ならいい」が34%で最多であり、次いで「月15時間くらいまでの残業ならいい」が31%、「残業はない方がいい」が18%などとなっている。理系では「月30時間くらいまでの残業ならいい」が42%で最多であり、次いで「残業はない方がいい」が24%、「月15時間くらいまでの残業ならいい」が22%などとなっている(図表3-3)。
文系・理系ともに「月30時間くらいまでに許容限度がある割合」(「残業はない方がいい」から「月30時間くらいまでの残業ならいい」の合計)が8割以上であり、一日当たりに換算すると、毎日1~1.5時間以下の残業時間になる。無理のない働き方であるととともに、36協定に定められる残業上限時間である月45時間を超えない範囲であることから、妥当な感覚と思われる。今の学生の中では、「過剰残業してでも業績を上げる人が偉い」という考え方ではなく、「限られた時間で効率よく業績を上げることを評価する」という価値観が主流になっていると推測される。
また、これまでの調査では、文系に比べて理系の方が残業時間に寛容な傾向が見られたが、今回はそれが逆転していることに注目したい。実験や研究のために研究室に長時間こもることも少なくない理系は、ある意味、残業慣れしているとも言える。ただ、その生活を是としない風潮が強まってきたのかもしれない。

【図表3-3】文理別 許容できる残業時間

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「地元就職への興味」を持つ学生は約半数、比較的文系に多い傾向

人材不足が蔓延している日本の企業であるが、地方に在籍する企業では、より深刻な事態となっている。地方地域の人口動態を見ると、社会動態(転入・転出による人口増減)で必ず急激に減少するのが、将来を担う労働力人口である20~24歳代の若者世代である。就職や進学により、地元を離れ、都市部に流出していくのである。地元企業としては、なんとか地元の若者に地元就職をしてほしいと望んでいるが、学生の意向はどのようになっているのだろうか。
学生に「地元就職への興味」について聞いたところ、地元就職に興味がある割合は、文系58%、理系48%となっており、比較的、文系学生の地元就職に興味を持つ割合が高いことが分かる(図表4)。前述したとおり、理系は特に大手志向が強い傾向があり、地元より大手企業が多い都市部での就職を希望する割合が高いのは、当然のことであるのかもしれない。また、具体的に就職したい企業が絞られている場合には、その企業の研究所等の場所も調べて、他地域にあることを受け入れている学生もいるのだろう。
このように、就職したい企業として、学生は何らかの重視する条件を持っていることが想定されるが、実際に、どのような条件が重視されているのだろうか。

【図表4】文理別 地元就職への興味の有無

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

「就職を希望する企業として重要視する条件」は「福利厚生」がトップで半数以上、志向別の特徴あり

学生の「就職を希望する企業として重要視する条件」については、全26項目の条件を提示した中で、「福利厚生」が54%で最多であり、次いで「仕事内容」が53%、「安定性」が47%などとなっている(図表5-1)。6月調査の結果では「仕事内容」が最多(58%)であり、次いで「給与・待遇」(53%)、「福利厚生」(50%)という順位である。本調査結果では、「給与体系」は6位(37%)となっており、2021年卒学生は、仕事内容とともに「仕事を含めた生活全体の質」に注目し、企業を選ぶ際の条件として、金銭的な豊かさより重要視されていることがうかがえる。
さらに、これまでに分析してきた学生の就職に関する志向と「就職を希望する企業として重要視する条件」の関係性を紐解いてみると、以下に示す傾向が見えてきた。

【図表5-1】就職を希望する企業として重要視する条件

HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【3】

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:「就活会議」×「HR総研」2021年卒学生対象インターンシップ及び就活意識に関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)、就活会議(株式会社リブセンス)
調査期間:2019年10月29日~11月12日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:2021年卒業予定の学生
有効回答:206件

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Eメール:souken@hrpro.co.jp

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