インターンシップの参加状況から、プレエントリー社数、面接社数などの活動量を確認するとともに、働き方改革への関心度や就活ルールについての思いなどを見ていきたい。
6割以上の学生が3社以上のインターンシップに参加
まずは、インターンシップへの参加状況を前年の同時期調査のデータと比較してみよう。文系・理系ともに、参加社数が少ない学生の割合が減少し、社数が多い学生の割合が増加している。参加「0社」の学生の割合はそれほど大きな変動はなく、参加率は微増にとどまっているが、全体の参加社数が増加したことで、延べ参加者数は大きく伸びていると言える。文系・理系別に見ると、文系では「1~2社」の割合が5ポイント減少し、「10社以上」の割合が7ポイントも増加している。理系の差異はもっと大きく、「1社」の割合が8ポイント、「2社」の割合が4ポイントと、「1~2社」の合計では12ポイントも減少し、「3社」が2ポイント、「4~6社」が4ポイント、「10社以上」は8ポイントも増加し、前年の倍の16%にもなっている。「3社」以上のインターンシップに参加した学生の割合は、文系・理系ともに63%にも達している。
当然、複数の企業のインターンシップに参加すれば、その内容を比較することにもなるので、企業としてはインターンシップをただ実施すればいいという問題ではなく、他社のプログラムとの差別化、優位化を図る必要が出てきている。また、ここでいうプログラムとは、当日の内容や運営方法はもちろんのこと、募集方法、事前選考方法、実施後のフォローに至るまでのトータルで設計する必要がある。応募者への連絡方法も重要な要素となっている。
[図表1]インターンシップ参加社数
12月のインターンシップが狙い目
インターンシップに参加した時期を見ると、「2018年6月以前」「2018年7月」といった早めの時期は文系の参加率が相対的に高くなっているが、「2018年8月」以降は文系・理系による差異はそれほど大きくない。最も参加者割合が多かったのは「2019年2月」で、文系・理系ともに55~56%と過半数の学生が参加している。次いで、企業の月別実施割合と比例するように、「2018年8月」が多くなっている。
注目すべきは「2018年12月」の参加者割合である。「2018年12月」の実施企業の社数は「2019年1月」より少なかったのに、参加者割合では「2018年12月」と「2019年1月」ではほとんど変わらない。企業にとっては、「2019年1月」よりも「2018年12月」のほうが集めやすかったと言えそうだ。
また、「1月」に後期試験を実施する大学も多く、通常の単位の取り方をしていれば残っている試験科目はそれほど多くはないとは言え、学生からすれば試験が終わる1月下旬までは参加しづらい時期でもある。さらに、国公立大学では後期試験が2月上旬に実施される大学が多く、1月下旬のインターンシップには参加しづらいものである。「1月」よりも「12月」のほうが、参加する学生にとっても、募集する企業にとってもメリットがありそうだ。
[図表2]インターンシップ参加時期
「早期選考会」というインターンシップルート選考
次に、インターンシップに参加した企業から、参加後にどんなアプローチがあったのかを見てみよう。「何もない」と回答した学生は文系・理系ともに2割もいない。残りの8割以上の学生は、企業側から何らかのアプローチがあったことになる。
アプローチ内容のトップは「早期選考会の案内」で、文系で49%。理系では57%もの学生が案内を受けている。かつては、「(プレ)エントリー受付開始の案内」が断トツのトップであった時期が長くあったが、それはインターンシップを採用選考に直接つなげてはならないという経団連の倫理憲章や指針に鑑み、企業側がインターンシップ以外の名目で採用広報解禁前に学生と接触することを自重していたためである。近年では、インターンシップは完全に採用活動の1ステップの位置づけとされ、インターンシップ参加者には3月1日の採用広報解禁を待つことなく、面接等の呼び出しをかけることが半ば当たり前になってきている。逆に言えば、そのためにインターンシップを実施しているともいえる。
もちろん「早期選考会」は必ずしも3月前に実施されるものだけでなく、3月に実施される場合もあるだろう。ただし、「(プレ)エントリー受付開始の案内」が34~36%にとどまる背景には、インターンシップ参加者には3月1日以降に再度のプレエントリーを求めない企業が大半であることを意味している。インターンシップルートの学生と、3月1日以降のプレエントリーからスタートする通常ルートの学生という複線型の選考方法を採る企業が増えている。
[図表3]インターンシップ参加企業からのアプローチ
プレエントリーをしない学生が倍増
就職ナビや企業の採用ホームページを通じたプレエントリー社数を聞いたところ、文系・理系ともに「0社」の割合が伸びている。2019年卒文系7%→2020年卒文系13%、2019年卒理系12%→2020年卒理系19%といった具合である。その分、「1~20社」の割合を見ると、2019年卒文系40%→2020年卒文系36%、2019年卒理系54%→2020年卒理系46%と減少している。プレエントリーの数量は確実に減少傾向にあるとは言えるものの、その他の社数については、ほとんどが横ばいか微妙な差異にとどまっている。また、中には、理系の「41~60社」では2019年卒8%→2020年卒12%、文系の「101社以上」では2019年卒2%→2020年卒4%のように伸びているところも見られる。
インターンシップ参加者には、フォローとして「早期選考会案内」が届いており、プレエントリーをすることなく、選考ステップに進む例が増えているものと推測される。この傾向は今後さらに強くなるだろう。
[図表4]3月下旬時点でのプレエントリー社数
「ONE CAREER」「就活会議」が躍進
活用している就職ナビを聞いたところ、依然として「マイナビ」「リクナビ」が2強を形成しているものの、大きな変化が現れています([文系・[-図表2]、[理系・[-図表3])。それは、それぞれのサイトを挙げたれている。それぞれのサイトを挙げた学生の割合である。昨年の調査との比較で見ると、「マイナビ」は文系:90%(2019年卒)→73%(2020年卒)、理系:86%(同)→69%(同)、「リクナビ」も文系:90%(同)→71%(同)、理系:87%(同)→69%(同)と、いずれも大きくポイントを落としている。どちらかのサイトだけというわけではなく、ほぼ同様の傾向となっている。9割以上の学生が会員登録はしているものの、3月下旬時点で「活用している」かというと、2強をもってしてもそこまでではないということになる。インターンシップから選考に回る学生も増える中で、6月にインターンシップ情報サイトとしてプレオープンした際には「活用する」も、3月のグランドオープン時点ではもはや「活用されない」サイトになってしまっているということである。
そして、もうひとつ注目すべきは、「ONE CAREER」と「就活会議」の活用度である。この2つのサイトは、昨年までは選択肢に入っていなかったものの、「その他」サイトを選択した学生に具体的なサイト名の記入を求めたところ、この2サイトの名前が散見されたため、今回の調査で初めて選択肢に含めたものになる。そのため、昨年との正確な比較はできないものの、「ONE CAREER」は文系・理系ともに5位、「就活会議」は文系で6位、理系では4位と、「キャリタス就活」を上回る支持を得ている。就職戦線が早期化、分散化するなかで、クチコミサイトの利用度が高まっている。
ご存じない方もいるだろうから、2つのサイトについて少し紹介しておこう。「ONE CAREER」は、株式会社ワンキャリアが運営し、テクノロジーを駆使してユーザーの行動データを蓄積・解析し、最適なマッチングを行うと謳っている。エントリーシートや体験談を掲載するクチコミサイトで、上位校と呼ばれる学校群での会員登録率が高いのも特徴となっている。
「就活会議」は、株式会社リブセンスが運営するクチコミサイトで、社員や元社員のクチコミのほか、先輩のエントリーシートや選考体験記を確認できる。会員登録は大学支給の「ac」ドメインのメールアドレス限定されるなど、えせ学生の登録を排除するつくりになっている。
[図表5]活用する就職関連サイト
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【調査概要】
調査名称:【HR総研】「2020年卒学生 就職活動動向調査」
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査協力:「楽天みん就」
調査対象:2020年卒の大学生・大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2019年3月18日~3月25日
有効回答:855名(文系:541名,理系:314名)
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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