2回目の今回は、学生の各就職ステップの活動量と内定状況について取り上げることにする。
※「みん就」会員は、早期から就職活動を開始する意識の高い学生の割合が多いため、他の就職ナビ発表の調査結果のデータよりも進捗率が高めに出る傾向があります。ご注意ください。
また、理系学生の就職活動ではご存知のように推薦制度による応募が少なからずあり、自由応募学生のデータと混在すると傾向が分かりづらくなるため、今回取り上げるデータはすべて文系学生のデータとさせていただきます。ご了承ください。
年々減少するプレエントリー社数
経年変化を見ていただけるよう、2019卒と2018卒の比較だけでなく、2017卒も含めた3年間の同時期調査のデータでご紹介する。まずは、プレエントリー社数の変化である。
「40社以下」にプレエントリーした学生の割合は増加し、「41社以上」にプレエントリーした学生の割合はすべての区分で減少している。「1~20社」の区分では、2017卒と2018卒の比較では2018卒の割合が若干減少しているものの、その分を「21~40社」の区分で吸収していると言える。こう見てみると、ものの見事にプレエントリー社数が毎年減少傾向にあることが分かる。2017卒と2019卒との比較では、「40社以下」の割合は54%→72%と18ポイントも増加している。逆に、「81社以上」という活動量の多い学生の割合は17%→5%へと12ポイントも減少している。学生から企業へのプレエントリー社数の総量は、この2年間でかなり減少していることになる。
[図表1]プレエントリー社数の経年比較
多数企業のセミナー参加学生が激減
次に、個別の企業が開催するセミナーや会社説明会への参加社数の推移を見てみたい。プレエントリーと違って、社数が多い区分が軒並み減少しているわけではないことが特徴である。「15~19社」「20~24社」「25~29社」の区分を見てみると、3年間での変化はそれほどあるわけではない。ただし、「30社以上」の割合だけは、2017卒:17%→2018卒:14%→2019卒:8%と、2年間で半減以下にまで激減している。逆に、「14社以下」の区分はほぼすべてで毎年増加しており、「14社以下」の合計で経年推移を見てみると、2017卒:48%→2018卒:51%→2019卒:57%と10ポイント近くの増加となっている。「30社以上」という活動量の多い学生の割合が減少し、「14社以下」の比較的活動量の少ない学生割合が増加したということだ。
[図表2]個別セミナー・会社説明会参加社数の経年比較
他の就職ステップと傾向が異なる面接社数
次に、面接を受けた社数の経年比較を見てみると、おもしろい傾向が表れている。大きく変化が見られるのは、「4~6社」の割合が毎年減少していることくらいで、その他の区分ではそれほど大きな変化が見られない。「15~19社」の区分では、2017卒から2018卒へかけて2ポイントの増加があったが、逆に2018卒から2019卒にかけて2ポイントの減少があり、ちょうど2年前の数字に並んでいる。2017卒と2019卒のデータを比較してみると、「4~6社」で5ポイントの減少が見られる以外、その他の区分での差異は2ポイント未満に収まっているのである。これはどう考えればよいのだろうか。
結論から言えば、プレエントリー社数や個別セミナー・会社説明会の参加社数は、確かに学生の活動量は減っているが、面接した社数(応募した社数)については減少しているとは言えないということである。つまり、「プレエントリー」や「個別セミナー・会社説明会」といったこれまでの就職ステップを経ることなく、いきなり「面接」からスタートする学生が増えているということである。では、どこから「面接」に辿り着いているのか。考えられる主なルートは二つある。一つは、前回のHR総研:「2019年&2020年新卒採用動向調査(6月)」結果報告vol.1で見た「インターンシップ」である。参加者には「早期選考会・面接」の案内がされている。「インターンシップ」が「セミナー」の役割を果たしてしまっているというわけである。そしてもう一つは、HR総研:「2019年&2020年新卒採用動向調査(6月)」結果報告vol.2の冒頭でも紹介したように、「リファラル採用」や「逆求人型サイト」のダイレクトソーシングの活用である。ダイレクトソーシングは、学生に対してマスではなく個別にアプローチしており、セミナーや会社説明会に呼び込むのではなく、「個別面談」(応募意思が形成されているわけではないので、「面接」ではない。その前段階の動機形成の場)に呼び込むことが普通であり、そこで動機形成された学生が、「面接」へと進むのである。面接社数という観点では、学生の活動量は減少していないと推測される。
[図表3]面接社数の経年比較
きれいな前倒し傾向を示す面接時期
面接時期の比較もしてみたい。面接を開始した時期ではなく、面接を実施した月をすべて選んでもらったところ、「4月」までは毎年実施企業の割合が増え、「5月」から一転して減少傾向となっている。2017卒と2019卒の比較では、前年10月以前:2%→5%、前年11月:1%→3%、前年12月:3%→6%、1月:5%→11%、2月:12%→24%と、2倍からそれ以上に増えている。それ以降も、3月:49%→63%、4月:79%→85%へと増加を続け、5月:92%→87%、6月:78%→64%へと5月以降は減少している。経団連の指針では面接解禁日とされる6月に面接を実施した企業は3分の2に満たないという状況である。この流れで行けば、来年の2020卒採用における面接のピーク月は、「5月」から「4月」に前倒しになりそうである。
[図表4]面接を受けた時期の経年比較
上位校の学生ほど「面接」とは別の名目で呼び出し
経団連の指針では、面接選考の解禁は6月1日とされており、経団連加盟の大手企業の間では、解禁前の5月末までは「面接」という表現を使わずに学生との接触を重ねている企業が多い。そこで、「面接」以外の名目での呼び出しにも関わらず、実質的には面接だったことがあるかを学生に聞いてみたところ、やはり大手企業の選考を多く受けている上位校ほど、そのような事実が裏付けられた。旧帝大クラスでは87%もの学生が、「面接」以外の名目で選考会に呼び出された経験を持つ。早慶クラスでも81%と8割を超え、上位国公立大や上位私大クラスでも7割を超える。
具体的にどんな名目が使われたかをフリー記述式で回答してもらったところ、最も多かったのは「面談」。さらに、それ以外にも「社員面談」「リクルーター面談」「キャリアマッチング面談」「ジョブマッチング面談」「マッチング面談」「事前面談」「模擬面談」「個別面談」など、さまざまな表現が使われているようである。中には、「一次面談、二次面談、人事面談、役職者面談、最終面談」など、明らかに「面接」を「面談」と差し替えているだけの例もあり、笑える。最も笑えたのは「人事部長と選考前面談」だ。そこまで細かく表現していながら、面接とは決して呼ばないその姿勢に脱帽する。その他の名目で多かったのは、「座談会」「お茶会」「キャリアミーティング」「懇談会」「懇親会」「個別説明会」「質問会」「社員訪問」「就職相談会」「食事会」「対話会」など。
[図表5]「面接」名目以外での呼び出しの有無
年々増加する複数内定保有学生
6月後半(6月14日~6月25)時点での内定保有状況を聞いてみた。こちらも経年比較してみると、「0社」、すなわち未内定者は2017卒:20%→2018卒:15%→2019卒:14%と着実に減少している。逆に言えば、2017卒:80%→2018卒:85%→2019卒:86%と内定保有者が増えているということである。さらに、内定を「1社」のみ保有する学生も、2017卒:32%→2018卒:30%→2019卒:27%と年々減少しており、6月後半時点で2社以上の内定を保有する学生が年々増えているということになる。複数内定を保有する学生の割合は、2017卒:48%→2018卒:55%→2019卒:58%と、ここ2年間で10ポイントも増加している。特に「4~6社」の内定を保有している学生の伸びが高い。
[図表6]6月後半時点での内定保有社数の経年比較
内定率では大学間格差が減少
内定保有社数を大学グループ別に比較してみると、未内定者の割合は旧帝大クラスや早慶クラスといった上位校と、中堅私大やその他私立大では10ポイント前後の差が見られる。ただし、かつて面接選考解禁日が4月1日だった時代と比較すると、大学間格差はこれでも劇的に解消している。
[図表7] 6月後半時点での内定保有社数(大学グループ別)
参考までに、倫理憲章の最終年であった2015卒学生を対象に実施した4月下旬時点の調査データを見てみると、早慶クラスの未内定率が20%だったのに対して、その他私立大のそれは実に60%にも達していた。4月の選考解禁ですぐに内定を出していたのは大企業がほとんどで、中堅・中小企業の選考・内定出しは5月以降に本格化していたためである。つまり、当時の選考解禁月に内定を持っていたのは大企業からの内定が大半で、中堅・中小企業からの内定はまだこれからというように時期が明確に分かれていたのである。それに対して、近年は中堅・中小企業もインターンシップもそうだが、選考も比較的早くから実施し、大企業との選考時期の棲み分けがなくなってきたと言える。
[図表8]【参考】2015卒学生の2014年4月下旬時点での内定保有社数(大学グループ別)
内定先の企業規模では大学間格差が歴然
かつて40ポイントもあった内定率での大学間格差は10ポイントほどに縮まったものの、内定を保有している企業の従業員規模で比較してみると、そこには依然として大学間格差があることがよく分かる。例えば、旧帝大クラスの学生で「5001名以上」の大企業からの内定を保有している学生は62%にも達するのに対して、その他私立大の学生は20%にとどまる。逆に、「101~300名」の中小企業からの内定を保有している学生は、その他私立大では38%あるのに対して、旧帝大クラスではわずか6%にとどまる。内定率自体の格差は減少しているものの、どういった企業群から内定を得ているのかまで突き詰めると、内情は全く異なるのである。
[図表9] 6月後半時点での内定保有企業の従業員規模(大学グループ別)
減少に転じた6月の内定取得
内定を取得した時期をすべて選んでもらったところ、経年での比較で明らかな前倒し傾向が見てとれる。「前年12月以前」から「今年5月後半」までは年々内定を取得した学生が増加し、例えば「5月前半」は2017卒:17%→2019卒:27%と10ポイントも増加している。「6月前半」は今年もピークであることに変わりはないものの、2017卒:61%→2018卒:65%と増加したのち、2019卒:57%へと減少に転じた。「6月後半」に至っては、2017卒:23%→2018卒:10%→2019卒:7%と昨年からすでに減少し始めている。
[図表10]内定を取得した時期の経年比較
今後の内定辞退に要注意
複数内定を保有している学生に、第一志望企業以外への内定辞退連絡が完了しているかを確認したところ、6月後半時点ではまだ内定辞退を連絡し終わっていない学生が少なからずいること、また、大学グループによる差が大きいことが分かった。内定辞退の連絡が最も進んでいるのは「早慶クラス」で、「すべての企業に内定辞退を伝えた」学生が73%と7割を超え、「まだ(1社にも)伝えていない」学生は16%にとどまる。一方、「その他私立大」では、「すべての企業に内定辞退を伝えた」学生は47%と半数に届かず、「まだ伝えていない」学生が31%にも及ぶ。この違いは何だろうか。一概に学生の質で片づけるわけにもいかない。考えられる理由の一つに、内定先企業の違いがあるのではないだろうか。「早慶クラス」や「旧帝大クラス」といった上位校は、志望していた大企業に内定している割合が多いのに対して、そうでない大学グループでは当初の志望企業の選考に漏れて、方向転換した学生の割合が多く、内定に対する満足感や納得感に差があるのではないだろうか。あるいは、内定した企業の中での順位付けすらできておらず、内定辞退連絡を怠っているのではなく、彼ら自身の中で内定受諾の企業と内定辞退する企業との切り分けが、この時点でまだできていなかったのではないかと推測される。
[図表11]内定辞退の連絡状況(大学グループ別)
【調査概要】
調査名称:【HR総研】「2019年卒学生 就職活動動向調査」
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査協力:楽天「みん就」
調査対象:2019年卒の大学生・大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2018年6月14日~6月25日
有効回答:1,658名(文系:1,048名,理系:610名)
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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