人事業務の生産性向上における一つの手法としてアウトソースがある。HR総研では今回、人事関連業務の「アウトソース」(採用を除く)についてアンケート調査を行ったので、その結果をレポートする

アウトソースを利用している企業は約半数、そのうち「給与管理」の利用が27%、「社会保険手続」が20%という結果となった。

アウトソースを利用する目的を聞いたところ、第1位は「コスト削減」で47%。では第2位、第3位となったのはどのような目的だろうか。またアウトソース利用に関して、人事の皆さまはどのような課題をもっているだろうか。

詳細をぜひご覧ください。

アウトソースしている業務の最多は「給与管理」

人事業務の一部または全部を切り出して外部に委託するのが、人事業務のアウトソースである。今回の調査では「採用」に関するアウトソースを除いて、人事業務アウトソースがどのように利用され、課題があるのかを探ってみた。

最初に、どのような業務をアウトソースしているかを訊ねた。第1位は「給与管理」で27%である。第2位は「社会保険手続」で20%、第3位は「社宅・寮管理」で10%であった。「いずれもあうとソースしていない」が50%であり、アウトソースを利用していない企業が全体の半数だった。

詳細を見ると、規模別では差異がある。たとえば、「給与管理」「社会保険手続」を最も利用している規模は300名以下の中小で、それぞれ30%、23%である。全体では8%となっている「カフェテリアプラン」は、1001名以上の大規模では20%が利用しており、1000名以下では4%以下だ。「カフェテリアプラン」は、中小規模では導入していないところも多いからであろう。

〔図表1〕アウトソースしている人事関連業務

HR総研:人事関連業務のアウトソースに関する調査

今後アウトソースしたいのは「勤怠管理」や「通勤管理定期」

「今後、アウトソースすることを検討したい」人事関連業務を聞いたところ、「給与管理」(25%)、「社会保険手続」(19%)に続き、「勤怠管理」(13%)、「通勤定期管理」(10%)が上がった。

規模別に詳細をみると、「勤怠管理」をアウトソースしたいのは301~1000名の中規模が多く19%となっている。また1001名以上の大規模では、「研修管理」や「社員問い合わせ窓口」をアウトソースをしたい企業が10%あった。こうした差異がでてくるのは、アウトソースは企業規模によって、コストメリットや業務効率化の効果の出方が変わるからであろうか。

〔図表2〕今後アウトソースすることを検討したい人事関連業務

HR総研:人事関連業務のアウトソースに関する調査

アウトソースする目的は「コスト削減」「業務処理の効率化」「本業への集中」

人事関連業務をアウトソースしているか検討中の企業に、アウトソースの目的をきいたところ、「コスト削減」が47%で第1位だった。アウトソースする業務は定型的な業務が多いが、そうした作業的な労働をアウトソースすることで人事部門の人件費を削減するということだろう。さらに「業務処理を効率化」(第2位、44%)することで人事関連の作業的な労働を削減し、その余剰分で「本業への集中」(第3位、38%)したいという人事部門の要望も現れている。「組織のスリム化」(第4位、36%)もこれらの結果として達成したい、ということだと考えられる。

給与計算をはじめ作業的に行える業務をアウトソースし、人事は本来なすべき本業に集中できるようにするという考え方は、このところ定着してきているようだ。

〔図表3〕アウトソースする目的

HR総研:人事関連業務のアウトソースに関する調査

アウトソース先の選定基準は価格がトップ

アウトソース先の選定基準については、「価格」が36%でトップとなった。アウトソースする目的が「コスト削減」であれば、価格が見合わなくては意味が無くなってしまう。はやり、「価格」は重視すべきポイントということになるだろう。第2位は「サポート体制」(34%)、第3位は「カスタマイズ力(28%)である。アウトソースを委託するうえで安心して任せられるサポート体制に重きをおき、さらには「うちではこのようにやっているので」といった自社独自の方法にもカスタマイズして対応してくれる柔軟性を求めたい、ということであろう。

〔図表4〕アウトソース先の選定基準

HR総研:人事関連業務のアウトソースに関する調査

アウトソースの課題はコストの見合い、セキュリティ、ノウハウ消失

アウトソースの課題について自由記述にて意見を求めた。
アウトソースを開始するにあたっては、現状の業務の整理と、何をどこまでアウトソースするかなどの検討が必要になるが、「移管するまでに手間がかかりすぎる」(301~1000名、サービス)といった初動の労力に対する負担の声があった。

また、アウトソースする内容については、「福利厚生について、サービス提供会社のお世話になっています。給与計算などは過去にアウトソースしたこともありましたが、給与体系が複雑なため、当社の場合はうまくいかなかったという経緯があります」(301~1000名、サービス)といったように、業務状況によってアウトソースへの適合・不適合があるようだ。

コストに関しては、「内製の方がコストが安く、経営的にはメリットが少ないと考えられてしまう」という意見もあり、コストの見合いは検討にあたって重要だろう。特に人件費削減という面では、委託できた業務分の人を減らさなければ実質的なコスト削減にはならないので、注意が必要である。

アウトソースに否定的な意見では、「個人情報の取り扱いが厳粛になり、社内での管理を求める声が強くなった」(300名以下、商社・流通)、「セキュリティの問題だけでなく、アウトソースすると社内にノウハウが残らないから」(300名以下、マスコミ・コンサル)というものがあがった。情報管理はセキュリティ面で信頼できるアウトソース先を選定し、綿密な連携をとって補完していくことが可能だろう。一方、社内にノウハウの蓄積がなくなるというのは、アウトソースを開始するときには見落としがちだ。現に、給与計算を丸ごとアウトソースして、社内に給与計算ができるスタッフがいなくなってしまい、社員からの問い合わせに窮する場面もあると聞く。アウトソースを活用しながら、ノウハウが無くならないように自社での育成もしていく工夫が必要となるだろう。

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業の人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年5月25日~6月2日
有効回答:106件 (1001名以上:32件、301~1000名:24件、300名以下:50件)

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