HR総研では「人事系システム」についてアンケート調査を行った。今回はそのうち、「給与管理システム」についての調査結果をレポートする。

8割の企業が導入している「給与管理システム」は、人事業務にとっては欠かせないシステムである。今回の調査では、そのうち7割が「パッケージ型」のシステムを利用していることが判明した。しかし中堅規模では、24%がクラウド型などのサービス型を導入していて、給与管理システムにおいてもクラウド型が徐々に増加しているようだ。

システムの選定の基準は、「使いやすさ」と「初期費用」「保守費用/利用料」といったコスト面がトップだが、1001名以上の大規模企業では、機能面や導入コンサルタント・技術者の質なども選択基準として上がった。保守サービスや改定時の迅速さやコンサルタント・技術者の対応に対して「満足」と評価されており、逆にそうした面での不満足があると、製品全体への不満になっている実態が明らかになった。

※企業規模別の数値、自由記述による課題提示等の詳細は、ログインの上、ぜひご確認ください※

給与管理システムの課題は複雑な職種・シフトへの対応

給与管理システムは、人事系システムのなかで最も多く導入されているシステムで、今回のアンケート調査では80%の企業が「導入している」と回答した。給与管理を導入していない理由としては、「予算」(32%)であり、「自社に適したシステムがわからない」「システムがなくても管理できる」「アウトソースを利用」が15%で同率だった。

給与管理システムを導入していても、様々な課題がある。自由記述にて回答してもらったところ、「全拠点展開できておらず、Excelファイルでの運用が残っている」(1001名以上、メーカー)といった拠点対応ができていない企業や、「職層が多く、シフト上管理が煩雑。よって支払計算も複雑」(301~1001名、サービス)というように、業務の多様性の実態にシステムが追い付いていないという現実も見受けられた。また、昨今のグローバル化を反映して、「外国人社員に名前が対応できない。中国人の難しい字、タイ人」(301~1001名、メーカー)というシステム上の不足もでてきている。また勤怠システムと連携していない、官公庁提出書類が出力できない、などの不満の声もあがった。

給与管理は普及率が高いシステムだが、必ずしも企業それぞれの実態に則した使い勝手がよいシステムが導入されているというわけではなさそうである。また、かつては十分な機能だったとしても、年月が経つにつれ業務内容等が変更することにより、実態に則さなくなってしまっている点もあるようだ。

〔図表1〕「給与管理システム」を導入しない理由

HR総研:人事系システムに関する調査【2】給与管理システム

給与システムの導入を主導するのは人事部門が68%

給与システムについて、導入を主導するのはどこかを聞いたところ、68%が「人事部門」であり、13%が「情報システム部門」だった。

規模別に見ると、1001名以上の大手では、情報システム部門の比率が高くなり、給与システムの導入を主導するのは19%である。導入主導部門は、メーカーと非メーカーでも差があり、メーカーの301~1000名の中堅では「情報システム部門」と回答したのが40%であるのに対し、非メーカーで「情報システム部門」と回答した比率は0%である。メーカーの方が「情報システム部門」が主導する傾向が高いようだ。

〔図表2〕給与管理システムの導入を主導する部門

HR総研:人事系システムに関する調査【2】給与管理システム

サービス型(SaaS、クラウド)は大手では8%と僅か

給与管理システムにおけるシステム化の手段を聞いたところ、「パッケージ型」が最多であり、全体で70%を占めた。「サービス型(SaaS、クラウド等)」は、大手ではわずか8%である。

注目したいのは、301~1000名の中堅企業で、「パッケージ型」が48%と他の規模と比較して少なく、その分「サービス型(SaaS、クラウド等)」が24%と多いことである。従来は、給与データなどの守秘性が高いものを管理するには、自社でサーバーをたてて管理するのが当然であり、給与データをクラウド型で運用することには抵抗があったが、昨今ではそのような考え方よりもむしろクラウドを利用するメリットが訴求されているようである。特に中堅規模では、サーバーや保守にかかるコストよりクラウドの方が総合的に安価になることなどから、クラウドを選択する企業が増えているのだろう。

〔図表3〕給与管理システムのシステム化の手段

HR総研:人事系システムに関する調査【2】給与管理システム

選定基準は「使いやすさ」「初期費用」「保守費用/利用料」がトップ3

給与管理システムの選定の基準は、「使いやすさ」が73%、「初期費用」「保守費用/利用料」が共に69%だった。給与管理システムは主に人事担当者が利用するシステムであり、利用者は限定されているが、使いやすいものかどうかという点は重要だということである。また費用はもちろん選択基準とする企業が多数である。

1001名以上規模でみると、非メーカーでは「機能の充足度」(63%)、「導入担当者(コンサルタント/エンジニア)」(50%)、メーカーでは、「カスタマイズ力」(41%)が挙げられた。企業規模が大きくなると、その分複雑な職種やシフトなどの多様な働き方がある場合が多く、そうした要求に応えるためにはシステムがもつ機能の豊富さやカスタマイズができることが必要になってくる。またパッケージシステムを自社に適合させるためには、導入担当者の力量も選択肢の重要な観点となる。他社導入事例を数多く持っていて、コミュニケーション能力が高く、要件をシステムに落とし込む能力が高いエンジニアが求められているということであろう。

〔図表4〕給与管理システムの選定基準

HR総研:人事系システムに関する調査【2】給与管理システム

給与管理システムは6割が満足、不満は1割

「現在のシステム、およびサービス支援会社について満足していますか」と聞いたところ、「非常に満足」が12%、「まあまあ満足」が50%で、満足があわせて6割以上となった。「非常に不満」「少し不満」をあわせた「不満」は10%である。

満足の理由では、「現時点では問題・課題がないため」という理由が多いが、「使いやすい画面構成」(301~1000名、サービス)、「カスタマイズがしやすい」(1000名以上、商社)といった機能面の充足に対する声があった。また「仕組みとしては使いづらいところがあるが、カスタマイズへの対応の速さ、技術者の対応(情報提供、作業の質)が良い」(300名以下、情報)、「課題が発生した場合、柔軟に対応してくれる」(1001名以上、サービス)といった保守サービスの質の良さを上げているところもある。

逆に不満足の理由では、「機能不足、使い勝手が悪い。ユーザーサポートレベルが低い、制度改正時の対応において不具合が多い」(1001名以上、メーカー)といった悲痛な声があがった。「サポート、操作性、効率性が良くないため、ただデータをいれておくだけの箱になっている」(300名以下、メーカー)という、システムとしての機能を果たしていないものもあるようだ。また「当社向けの営業担当がいない」(300名以下、サービス)、「細かな部分での対応が遅い」(300名以下、メーカー)というサービスに対する不満も強い。

〔図表5〕現在のシステム、及びサービス支援会社についての満足

HR総研:人事系システムに関する調査【2】給与管理システム

【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016/5/25~2016/6/2
有効回答:106件 (1001名以上:32件、301~1000名:24件、300名以下:50件)

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