企業はこの日程変更をどうとらえているのか、そして面接選考の開始、内定出しの開始時期をどのように考えているのかを探ってみた。
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8月選考開始を継続すべきとする企業はごく少数
今回の経団連の新スケジュール(3月 広報開始、6月 選考開始)をどう評価するかを聞いてみた。全体集計の結果では、「『8月 選考開始』のままにすべきだった」とする企業は4%しかなく、最も多かったのは「『4月 選考開始』まで戻すべきだ」で49%と半数にも及ぶ。『時期の規制をなくすべきだ』とする意見も25%と4分の1もあり、今回の「『6月 選考開始』は妥当な判断だ」と評価する企業は14%と少数派である。経団連自身も『4月 選考開始』を理想としつつも、個別企業の説明会場の予約はもちろんのこと、大学での学内企業セミナーや各種の合同企業セミナーの計画も進んでおり、「3月 広報開始」を早めることは現実的ではないとの認識から、選考開始の前倒しは6月が限界との判断だったわけであるが、「3月 広報開始」を前提にしてもなお「4月 選考開始」にすべきだったという声が多いことになる。
経団連の会員企業が多い大手企業に限れば、「『6月 選考開始』は妥当な判断だ」とする企業が28%と他の企業規模の企業よりも多くなっている。経団連と同じ意見ということなのであろう。
[図表1]新スケジュールをどう評価するか(全体)
[図表2]新スケジュールをどう評価するか(企業規模別)
新スケジュールになっても状況は変わらない?
「6月」面接選考解禁の新スケジュールは守られるようになるのか。「守る企業が増える」とする企業が24%あるものの、「減る」とする企業も20%あり、結果的には今年同様の状況となりそうだ。
水面下での活動が6月や7月に行われていたことを考えれば、6月は8月よりも守りやすくなるとはいうものの、結局抜け駆けを図って少しでも優秀学生を囲い込もうとする動きを制御することはできず、水面下の動きがさらに前倒しになるだけだと考える企業が大半だ。
また、今年「8月 選考開始」を順守した企業からすると、守ったことによって採用では不利な立場に置かれることとなったわけで、来年、再度守ろうとする企業が減少することは十分考えられる。
[図表3]経団連加盟の大手企業の選考時期はどうなるか
学生にとっての評価も二極化
今回の変更は当事者である学生にとってよかったのか、悪かったのか。「良い変更だと思う」が30%に対して、「良い変更だとは思わない」とする意見も30%あり、真っ二つに意見は分かれた。
それぞれの理由は以下のようである。
■良い変更だと思う
・理系の研究への影響が緩和される。
・中小企業にとっては、採用活動を多少なりとも短期化できる。
・現状よりは多数の学生の就職活動期間が短縮される。
・8月解禁よりは、選考スケジュールに余裕ができる。
・水面下の動きが少しは減る。
・大企業に挑戦できる上に、判断も早めに出来そう。
・インターンが主流になりつつあるから。
■良い変更だと思わない
・フライング企業は多々発生するであろうし、心労は変わらないと思われる。
・講義や研究が本格化する6月の開始は、学生を学業に専念させるためとの目的で8月の夏休みの時期に変更した趣旨に反する。
・教育実習を予定している学生や、理系の学生には厳しいと思う。
・単位取得がまだ残っている学生もいるため、学業を優先させるべきだ。
・6月は学期中であり、勉強に専念できない。
[図表4]新スケジュールは学生にとってどうか
前回までの「12月-4月解禁」のスケジュール支持派が半数
今回の変更は2017年卒採用についてのものであり、2018年卒採用に向けては継続して検討していくこととされている。広報開始時期の変更に手を加えられなかった今回の変更は暫定的なものであり、抜本的な変更は2018年卒採用にまで持ち越すということである。
では、2018年卒採用ではどんなスケジュールが良いと考えられているのだろうか。いくつかの選択肢を用意して回答したもらったところ、最も支持されたのは、前回までの「12月広報開始、4月選考開始」で、48%と実に半数に迫る勢いである。次いで多かったのは、「2月広報開始、4月選考開始」の9%で、「5月 選考開始」を支持する声は最も少なかった。
[図表5]2018年卒採用で適切なスケジュール
「選考時期の自由化」も賛否は拮抗
順守されないスケジュールを撤廃して、各企業が自由にスケジュールを決められる方式の是非を聞いたところ、意見はものの見事に真っ二つに分かれた。「選考時期の自由化」=「通年採用」ととらえる向きもあるが、必ずしもそうではない。いつ選考するかは各企業の判断に委ねられ、各企業がホームページ等でスケジュールを事前に公表して行うというもので、4月の選考だけで採用活動を終了しても構わない。
「選考時期の自由化」に対する賛成派、反対派のそれぞれの理由は以下のようである。
■賛成
・すでに外資は完全自由化なので、優秀な人材が外資に流れる傾向を止める必要がある。
・新卒だけ足並みをそろえるのはおかしい。
・ルールがあっても、水面下では自由に行っている。
・新卒一括採用だけでなく、通年採用も一般的に広まったほうが、学生も就活のやり方を選べる。
・ルール違反に罰則がつくわけではないので、ルールを定めても自由に活動する企業が必ずいる。
■反対
・力の強い大手が先導することになるので中小はより不利になる。
・新卒採用という独特の仕組みがある日本においては、一定のルールは必要。
・それこそ内定者の奪い合いになり、1年以上内定者を繋ぎとめる必要がでてくる。
・時期が決まっていないと、学生の就職活動が長期化する。
・ある程度の目安がないと、大学も学生も活動がしにくい。
[図表6]「選考時期の自由化」をどう思うか
4月までに6割以上が面接選考を開始
全体の集計結果を見ると、経団連の面接解禁日である「6月」スタートを予定する企業はわずか16%と少数派。月別では「4月」が31%でトップ、次いで「3月」の23%が続く。4月までに6割以上の企業が選考スタートを予定している。
企業規模別に見ると、大手企業では「6月」スタートを予定する企業が36%と3分の1以上に上る。ただし、中堅・中小企業で「6月」とする企業は1割そこそこと少なく、2017年卒採用でも大企業と中堅・中小企業の選考時期の逆転現象は続きそうである。中堅企業を見ると、4月までに選考を開始する企業は76%と、4分の3以上にもなる。
[図表7]2017年卒採用における面接開始時期(全体)
[図表8]2017年卒採用における面接開始時期(企業規模別)
内定出しは「5月」が26%でトップ、次いで「4月」24%
内定出しのタイミングは、月別では「5月」が合計26%でトップ、次いで「4月」が24%で続く。選考開始から1カ月経過したところが、内定出しのタイミングとなっているようである。「6月以降」とする企業は34%と、3分の1の企業にとどまる。
企業規模別で見ると、大手企業の選考開始は「6月」が36%にとどまるものの、内定出しでは56%に上る。「7月」も合わせれば実に6割以上となる。「6月」は「選考開始」時期ではなく、「内定開始」時期という認識なのだろうか。中堅企業では、「5月」までに7割以上の企業が内定を出し始めるとしている。
[図表9]2017年卒採用における内定出しの開始時期(全体)
[図表9]2017年卒採用における内定出しの開始時期(企業規模別)
【調査概要】
■調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
■調査時期:2015年11月25日~11月27日
■調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
■調査方法:WEBアンケート
■回答者数:138名(1001名以上 25名/301~1000名 47名/300名以下 66名)
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