ターゲット大学の設定企業の割合は低下しているが・・・
採用戦略においてターゲット大学を設定し、特別の施策を講じているかを調査したところ、「している」(41%)を、「していない」(57%)が16%上回る結果となった。
前年に実施した2015年度新卒採用調査の結果では、「している」が44%、「していない」が55%であり、今回は「している」企業が前年よりも少し下回る結果となった。ただ、調査時期こそ同じであるが、採用広報が解禁されて、プレエントリーの受付や学内セミナー、合同セミナーが開始されていた2015年卒採用と単純に比較できるものではないだろう。解禁後1カ月の時点(3月下旬)で再度同じ質問をしてみたい。
[図表1]ターゲット大学設定の有無
ターゲット校設定率の低いメーカー中小企業
業界規模別の傾向に注目してみよう。
「メーカー」では、1001名以上の企業では59%、301~1000名の企業では63%が「ターゲット校を設定し特別な施策を講じている」と回答しているが、300名以下の企業での回答率は、大きく減少し、わずか17%にとどまる。文系学生よりも求人ニーズが強く、採用が難しい理系採用が多いメーカーにおいては、専攻にはこだわるものの大学層で絞り込むところまではいけない中小企業が多いようである。
[図表2]ターゲット大学設定の有無(メーカー規模別)
企業規模による相関が見られない非メーカー
一方、「非メーカー」では、1001名以上の企業でも「ターゲット校を設定し特別な施策を講じている」は33%にとどまるなど、企業規模とターゲット設定をしている企業の割合に相関は見られない。
[図表3]ターゲット大学設定の有無(非メーカー規模別)
強化される上位校ターゲティング
ターゲットとする大学グループを聞いたところ、最多回答は「GMARCH・関関同立クラス」の47%であった。また、2013年12月に実施した2015年度新卒採用調査の結果と比較し、回答比率が増加した学校群は「旧帝大クラス」31%(前年:28%)、「上位国公立クラス」36%(同:33%)であり、上位校へのアプローチを強化する傾向が分かった。
一方、回答比率が下がったグループは「地方国公立大クラス」の36%(同:43%)、「日東駒専・産近甲龍クラス」の26%(同:31%)。
(※)GMARCH・関関同立クラス:学習院・明治・青山・立教・中央・法政・関西・関西学院・同志社・立命館
日東駒専・産近甲龍クラス:日本・東洋・駒澤・専修・京都産業・近畿・甲南・龍谷
[図表4]ターゲット校とする学校グループ(前年比較)
メーカーと非メーカーに分けてターゲット校を比べてみると、メーカーでは48%の「地方国公立大クラス」をはじめ、国公立大の支持率が非メーカーよりも総じて高くなっている。歴史のあるメーカーほど国立大偏重の傾向はかねてより見られ、今回もそれは変わっていない。私立大の「理科単科大クラス」は、理系採用が中心のメーカーで支持率が高くなるのは当然である。
一方、非メーカーの支持率が大きく上回るのは「日東駒専・産近甲龍クラス」で、非メーカーの35%に対して、メーカーでは半分以下の17%しかない。
[図表5]ターゲット校とする学校グループ(メーカー・非メーカー比較)
ターゲット校数は増加傾向に
ターゲット校数を調査したところ、最多回答は「1~10校」(52%)であるが、「11~20校」の回答比率は31%と、前年(23%)より8ポイントアップしており、ターゲット校の設定は活発化していることが分かった。各社の採用意欲の高まりから企業にとっては採用難になってきており、ターゲット大学の枠を広げようとする動きもみられる。
[図表6]ターゲット大学数(前年比較)
ターゲット校からのターゲット人材採用への不安
すでに、ターゲット大学の学生と接点を持った企業に、2015年新卒採用と比べ採用成果をどう予測するかを聞いてみた。(前年調査では「採用活動の序盤戦で貴社が感じる“採用の手ごたえ”」として調査)
「質・量ともに良い学生が採用できそうだ」とする企業は、前年よりもさらに少ない5%に留まる。「量は問題ないが、質の高い学生の採用は苦戦しそうだ」「質の高い学生に絞るため、量では苦労しそうだ」はいずれも前年を大きく下回り、「質・量ともに苦戦しそうだ」が前年の32%から8ポイントアップの40%となり、最多回答。企業の求人意欲の高まりによる需給バランスの変化、採用スケジュールの繰り下げに対して、「質」「量」の両面において企業の危機感が表れている。
[図表7]ターゲット学生の採用成果予測
なお、2016年度採用成果の予測について、各選択肢を選択した理由として、下記のコメントが寄せられている。
〔質・量ともに良い学生が採用できそうだ〕
・現在のところ、見込み通りに推移しているため。
・待ちの姿勢ではなく、良い学生を引っ張ってくるようなリクルート型の採用方式に切り替えた為。
〔量は問題ないが、質の高い学生の採用は苦戦しそうだ〕
・毎年一定数の志望者は見込まれるため、量は問題ないが、上位層は競合と取り合いになり経団連指針を順守せず活動する企業に採り負ける懸念が高い。
・学生の大手志向に加え、大手企業も採用を強化している中で、優秀層は大手にとられてしまうと予測される。
〔質の高い学生に絞る為、量では苦戦しそうだ〕
・質の高い学生は、大手からのオファーも多くもらうことが予想され、自社の選考を辞退する確率が高いと思われる。
〔量・質ともに苦戦しそうだ〕
・採用活動が短期化し、採用活動に人員をさけないから。
・同じ考えを持つ企業が多く、大学を直接訪問している姿をよく見かける。
・他社も同じくターゲットにしているので、より競争が激化している。
ターゲット学校を設定している企業に、ターゲット大学以外の対象にはどのような対応を予定しているかを聞いてみた。
最多回答は前年同様、「すべてを通常の選考ルートに上げている」であり、77%の企業が回答している。
選考母集団におけるターゲット層比率を高めるために様々な施策を実施しつつも、「公平性」を担保した採用活動を打ち出すことも、新卒採用においては留意されるポイントであることが伺える。ただし、「ターゲット大学以外の学生は選考段階に上げない」「一定の大学で線引きをし、それ以下は選考段階に上げていない」「ターゲット以外は特別ルートのみ対応している(体育会、特定ゼミなど)」など、「効率性」を重視す企業も16%ある。
[図表8]ターゲット校以外の対象への対応(前年比較)
【調査概要】
調査主体:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の2016年度新卒採用担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2014年12月15日~12月25日
有効回答:251社(1001名以上:56社、301~1000名:81社、300名以下:114社)
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