「マタハラ」とは、マタニティー・ハラスメントの略で、働く女性が、妊娠・出産をきっかけに、職場で、精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、妊娠・出産を理由とした解雇や雇い止めや自主退職の強要で、不利益を被ったりするなどの不当な扱いを意味する言葉で、2014年には、新語・流行語大賞の候補50語に選出されました。

いわゆるセクハラ(セクシャルハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)より、認知度が低いようですが、2013年に日本労働組合総連合会が発表した調査では、妊婦の4人に1人の25.6%がマタハラ被害を受けたとの結果があり、セクハラ経験を大きく上回り、水面下には多くの泣き寝入り女性がいると思われます。

そもそも企業側が、妊娠出産育児による就業制限などで業務に支障をきたすという理由から、解雇などの対応を迫ってしまうケースがあります。妊娠中の嫌がらせなどから流産してしまうなど危険性も高く、その対応が急がれています。

2014年10月23日に最高裁判所第三小法廷が、妊娠を理由に降格を行ったことについて、業務上の必要性など特段の事情がある場合以外は、原則として男女雇用機会均等法違反(マタニティハラスメント)に当たるとの初判断を示しました。男女雇用機会均等法・育児介護休業法・労働基準法に違反する事例も大きく見られます。

マタハラの事例としては、妊娠を理由に退職を強要する、妊娠・出産に関する心無い言葉をかける、重いものを持たせたり、残業を強いられたりする、妊娠出産で空けた穴を埋めさせられた同僚によるいじめ、早く帰りづらい職場風土、育児などの価値観を押し付けられるなどがあります。また、妊娠前にも、未婚の女性に対して「今は産むな」などの言葉を圧力的にかけたり、就職面接で、「子供を産んでも働きますか?」などの質問を浴びせられたりするという事例もあります。

この事態を重く受け止め、厚生労働省もマタハラへの対応を強化しています。たとえば、「妊娠、出産を契機とした不利益な取り扱い」との表現を加え、時間的に近接していれば、違法性が疑われると判断されるようになったことです。今までは「不当な解雇や降格」と雇用者が訴えても「妊娠が理由ではない。能力不足」などと言い訳ができたのですが、今度からは「時間的に近接している」だけで「マタハラ」とみなされるわけです。これに対し、企業側も、従業員に法改正の周知徹底を急がれます。しかし、これに関するガイドラインが見えにくく、企業側も対応に苦労が見られます。