「コアコンピタンス(Core competence、直訳すると、「核となる能力」「得意分野」を意味する)」とは、競合他社を圧倒的に上回るレベルの能力や、真似されることの無い核となる能力のことを指します。
コアコンピタンスの概念はハーバード・ビジネスレビューVol.68(1990年)に掲載された「The Core Competence of the Corporation」の中で「顧客に対して、他社には提供できないような利益をもたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体」と紹介されたことを発端に、その概念が広められました。この記事は、ロンドンビジネススクールの教授ゲイリー・ハメル氏(Gary Hamel)とミシガン大学経営大学院教授C.K.プラハラード氏(C.K. Prahalad)が共同寄稿したものです。
企業のコアコンピタンスには、技術開発力、物流ネットワーク、ブランド力、生産方式、共通する価値観、等、多種多様が存在します。ブランド力がコアコンピタンスである例として、スポーツウェア・シューズメーカーのナイキが挙げられます。競合他社の製品と比較して技術や品質で大きな差がなくても消費者に選ばれる理由はそのブランド力があるからでしょう。その他にも、ホンダのエンジン技術、ソニーの小型化技術、シャープの薄型ディスプレイ技術がよく知られた例です。
企業がそのコアコンピタンスを見極める際に重要な5つの要素があります。
第一に、模倣可能性(Imitability)。
第二に、移動可能性(Transferability)。
第三に、代替可能性(Substitutability)。
第四に、希少性(Scarcity)。
そして最後に、耐久性(Durability)です。
上記5点の有効性は企業がおかれる市場環境や競争環境によって異なります。
また、競合他社に対して築いた競争優位性は市場の変化とともに劣化しないよう継続的な投資によって能力育成を行い、或いは、改めてコアコンピタンスの再定義を行う必要が生じる場合もあります。
このようにして見出したコアコンピタンスは、5年~10年先の未来の市場での成功を想定して設定し、育成していかなければなりません。とにかく目先の利益や現状の改善に目が行きがちですが、コアコンピタンスでは生まれつつある市場やチャンスを自ら創造し、成功を収めることを目標としています。
この未来のための競争で勝者となるために必要な企業資質は4つあると言われています。
1)未来のための競争が現在の競争と異なると認識する能力、
2)未来の市場機会を発見する洞察力を築く仕組み、
3)未来への長く険しい道程に向かって、会社全体を元気づける能力、
4)過度のリスクを避けながら、競合他社を追い抜いて未来に一番乗りする能力。
企業は独自のコアコンピタンスを武器に戦略を立て、それを遂行していくことで未来の市場をリードしていくのです。このようにコアコンピタンスを軸にした経営手法をコアコンピタンス経営ともいいます。