「キャリアパス(Career path、直訳すると「キャリアを積む道」を意味する)」とは、企業の人材育成制度の中でどのような職務にどのような立場で就くか、またそこに到達するためにどのような経験を積みどのようなスキルを身につけるか、といった道筋のことをいいます。要は、企業の中での異動や昇進のルートのことです。
終身雇用が一般的だった時代から変わり、キャリアアップのために転職することが当たり前となった昨今では、個人個人が進む道は多様化し、将来のキャリア像が描きにくくなりました。そこでキャリアパス制度が企業の人材育成制度の中で誕生しました。提示されたキャリアパスを見ることで、どのような仕事をどれくらいの期間担当し、どの程度の習熟レベルに達すればどう昇進できるのか。自分のスキルと経験をどのように活かすことができて、その先にはどのようなチャンスを得る機会があるのか。キャリアパスはキャリアアップのために必要となる社内基準や条件を明確化することで、社員が将来の目標に向けて意欲的に取組むことを可能とした制度です。
社員が目標意識を高くもって働けるということは、社員の成長につながり、また、モチベーションの高い優秀な人材を集めることも可能となり、会社の成長と利益につながります。また、企業が大勢の雇用者の適性を的確に把握し情報を蓄積しておくことは、急な配置転換や人事交代が必要となる際に活用することができ有益です。充実したキャリアパス制度を持つことは、社員にとっても企業にとっても非常に利点の多いことです。
業種や職種、企業によって具体的なキャリアパスの仕組みは異なります。例としてシステムエンジニア(SE)としてIT企業に入社した場合のキャリアパスの多様性を見てみましょう。一般的には、新人として入社し、SEとしての作業に習熟した後に目指すのはプロジェクトリーダーです。リーダーとしてSEをまとめる力が身につけば、次は管理職としてのプロジェクトマネジャーを目指すでしょう。部下をまとめ、業務全般を統括し管理する業務を磨いていくのであれば、プロジェクトマネジャーを束ねるプログラムマネジャーを目指し、経営的な視点からプロジェクトを指揮するポジションに就きます。管理する立場に就くよりも現場で活躍することを希望する場合は、より専門的な知識とスキルを磨きその道のエキスパートとなる道もあれば、より広範な知識を身につけ経験を積むことで他のポジションへの異動も可能となるでしょう。
現在、キャリアパスという概念は、企業での活用に留まらず、役所や教育機関、医療機関などでも幅広く使用されています。