「シリアルアントレプレナー(serial entrepreneur)」とは、新しい事業を何度も立ち上げる起業家のこと。日本語では「連続起業家」と訳されます。シリアルは「連続的な」という意味の英語です。
シリアルアントレプレナーが最初の事業を興し、次の新しい事業を立ち上げる場合、最初の事業は失敗したケース、成功したケースの両方があります。起業して不成功に終わっても、その経験を糧として次の起業にトライする、あるいは、事業を軌道に乗せた後、他社にその事業を売却・譲渡したり、株式公開して創業者利益を得た上で自分はその事業から手を引き、別の新しい事業を立ち上げる。こうしたことを繰り返すのがシリアルアントレプレナーです。
起業先進国といわれるアメリカには、シリコンバレーを筆頭に、シリアルアントレプレナーが数多くいるといわれます。その要因の一つと考えられるのは、起業して失敗した場合の金銭的リスクが小さいこと。アメリカでは、事業がうまくいかなくても返済義務がない資金をベンチャーキャピタルなどから調達し、起業するケースが多くなっています。
また、日本では事業を売却・譲渡することは失敗者・敗者のイメージで捉えられがちですが、アメリカでは逆に、自ら立ち上げて育てた事業が大企業に評価され、高値で買収されることは誇らしいことであり、成功者・勝者とみなされる風土があります。実際、グーグルやフェイスブックといった大手IT企業は、革新的な製品やサービスを持つベンチャー企業を次々に買収しながら自社のビジネスを成長させてきています。こうした文化を背景に、イノベーティブな事業を創り、育てて売るというサイクルを繰り返すシリアルアントレプレナーが登場しやすくなっていると考えられます。
日本では、アメリカなどの海外と比べて起業家が出にくく、シリアルアントレプレナーも少ないといわれてきました。しかし、近年では、ミクシィなどの大手インターネット企業がベンチャー企業の買収を積極的に行うなど、シリアルアントレプレナーが活躍しやすい環境が生まれつつあり、起業家も増えてきました。
将来が見通せず、過去にとらわれないイノベーションが求められる時代にあって、革新的なビジネスアイデアを次々に生み、実現させていく実行力を持つシリアルアントレプレナーへの注目は、今後高まっていきそうです。