「ホリゾンタル・リーダーシップ」とは、縦の上下関係で影響力を発揮するリーダーシップではなく、横の連携や組織を越えた協力関係で影響力を発揮するリーダーシップのことです。

従来のビジネスでは、ピラミッド型の組織でリーダーがトップダウンで指揮命令を行う、支配型のリーダーシップが一般的でした。経済が右肩上がりで、これまでのやり方を踏襲すれば成果が出た時代には、経験の豊富なリーダーが「自分について来い」と組織を引っ張ることが、業績を向上させる合理的な方法だったのです。

しかし、将来、何が起きるのかを見通すことが難しく、顧客のニーズも読みにくくなり、かつての成功体験がなかなか通用しなくなった現在では、リーダーが自らの過去の経験を強みとして組織を引っ張ることは困難です。リーダーの上意下達式の指揮命令に対し、メンバーが納得してついていくとも限りません。

現在の企業が持続的な成功を遂げていくために必要だとされるのは、従来なかった課題に対して新しい発想で解決策を見出し、フレキシブルに対応できる組織や、イノベーションを創出できる組織。そのためには、ダイバーシティを推進し、多様なバックグラウンドを持つ人材の中からアイデアが闊達に出てくる組織を運営する必要があり、社内の組織や部門間の垣根を越えた連携・協力や、さらには会社の枠を外して、社外の多様な組織と臨機応変にコラボレーションを行うケースも増えていきます。このような組織をマネジメントするために適しているのが、ホリゾンタル・リーダーシップです。

ホリゾンタル・リーダーシップを発揮する上では、多様な人々の立場や考え方を理解し共感する力や、調整する力、人と人、組織と組織のつながりを円滑にするネットワーキングのスキルが必要ですが、一般的に、女性はこれらを得意とする傾向があるとされています。

昨今、社会的な要請となっている女性リーダーの育成・登用。女性が管理職への昇進に消極的であることがネックだといわれていますが、その理由の一つとして、従来の支配型リーダーをイメージし、「自分は向いていない」と考えている、という可能性があります。これからのリーダー像として、企業が管理職にホリゾンタル・リーダーシップを求め、社内で周知させることが、より多くの女性リーダーが活躍しやすい環境づくりにつながるかもしれません。