大人としての『習慣』が形作られる1年目
学生から社会人に変わると、生活のリズムが一変する。そのため、社会人1年目は生活の変化に伴い、新しい『習慣』の基礎が形成されやすいという特徴がある。社会に出て最初の1年で身に付いた『習慣』は、一般的にその後、大きく変わることは少ないと言われる。そのため、最初に“好ましい習慣”を身に付けられれば、その『習慣』が生涯、人生に“プラスの影響”を与え続けることになる。
実は、社会人にとって重要なのは、仕事をしている時間ばかりではない。「仕事をしていない時間をどのように過ごすか」も、極めて重要だ。そのため、「空き時間をどのように過ごす『習慣』を身に付けるか」が、若者のその後の職業人生を大きく左右することになる。
ぜひ身に付けたい「学ぶ習慣」
社会に出た最初の年に、ぜひ身に付けたい『習慣』がある。それは、「学ぶ習慣」である。これにはいろいろな種類があるが、代表的なものといえば「本を読む習慣」であろう。書籍は知見の宝庫であり、書籍から学べることはまさに無限大だ。社会に出たら最低でも月に1冊は、ビジネス書などの書籍を読みたいものである。
たとえ月に1冊であったとしても、読んでいると読んでいないとでは、1年後には知識面・意識面・教養面・経験面などで大きな差がつくものである。書籍には、与えられた仕事をこなしているだけでは決して得られない数多くの知見があり、それらは若者の職業人としての成長を大きく促す。
また、社会に出た最初の1年間で書籍を読み続け、読書が『習慣』になった若者は、本を読むことが生活の一部となり、苦にならなくなる。その結果、本を読むという『習慣』が、何十年と続く職業人生を送る上での、貴重な差別化要因にもなってくるのである。
無目的にだらだらと過ごす“好ましくない習慣”
ところが、得てして社会に出た最初の1年は、“好ましくない習慣”を身に付けがちである。たとえば、仕事が終わった後の時間の過ごし方として、「スマホを操作する」、「テレビを見る」「、酒を飲む」、「マンガを読む」、「ゲームで遊ぶ」などの『習慣』である。もちろん、これらの行動自体が悪いわけではない。息抜きやストレス解消のために、一定の効果が期待できる行為も少なくないであろう。問題なのは、これらの行動に「無目的に長時間を費やすこと」である。
つまり、仕事が終わった後の時間についてスマホを操作することが問題なのではなく、長時間にわたって無目的にだらだらとスマホを操作し続けてしまう行為が問題なのである。これが典型的な“好ましくない習慣”である。皆さんにも、少なからず覚えがあるのではないだろうか。
社会人1年目で無目的にだらだらと過ごすことが『習慣』になった人物が、5年後、10年後に一念発起して読書を始めるなどは至難の業である。「本を読まないでだらだらと過ごす習慣」が身体に染み付いているからである。このように、一度、身に付いた“好ましくない習慣”は生涯、人生に“マイナスの影響”を与え続けることになるので、要注意と言える。
社会人1年目は「自ら学ぶ人材」になれるかの分岐点
読書の『習慣』が身に付いている人材は、「自ら学ぶことができる人材」である。そのような人材は、組織への貢献度が高くなりやすいため、どのような職場でも必要とされる有用な人材となるであろう。この点を鑑みると、社会人1年目は、「自ら学ぶ人材」になる『習慣』を身に付けられるかの大きな分岐点であることが分かる。この点が、『職業観』の形成と並び「社会人1年目は重要な意義がある」とされるもう一つの理由である。
しかしながら、「学ぶ習慣」が身に付いていない社会人は、意外にも多い。そのような人材は、単に知識面などが劣るだけではなく、「依存心が強い」、「自律心が弱い」、「権利意識が強い」、「達成意欲が希薄である」など、職業人としてマイナスに作用する思考特性を持つケースも少なくない。その結果、職場にあまり良い影響を与えない人材と判断されてしまうことがある。
本を読むなどの“好ましい習慣”は、その人の周囲の人から伝染しやすい。そのため、“好ましい習慣”を身に付けた上司または先輩の下で初めての社会人生活を送れば、若者も“好ましい習慣”を身に付けやすくなる。反対に、“好ましくない習慣”を身に付けている上司・先輩の下で初めての社会人生活を送ると、若者も“好ましくない習慣”を身に付けがちである。部下は、上司のマネをするものだからである。
念押しすると、社会人1年目は『職業観』と『習慣』の形成期に当たる点で、若者の生涯を左右する重要な年になる。皆さんの職場は、若者に好ましい『職業観』と『習慣』を身に付けさせられる職場環境が構築できているだろうか。是非この機会に点検してみて欲しい。