そもそも残業代は会社へのペナルティ?
「定時を超えたら25%アップの残業代」というのは皆さんご存知と思います。ではなぜ25%アップなのか理由までご存知ですか。それは残業をさせてしまった会社へ余分にお金を支出させることでペナルティを課しているのです。労働基準法でもしっかりと、「使用者は、原則として、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」ということになっています。これは言い換えれば、「従業員さんに1日8時間以上働いてもらうのなら余分にお金を出してくださいね」ということなのです。
加えて大事なのは、もし規定を超えて従業員さんに働いてもらわなければならない場合は、36協定といって、従業員さんの代表の方と合意を取り、労働基準監督署に届け出なければなりません。
そこで今回、時間外労働について上限規制が課せられるのが、この36協定に記載する時間外労働や休日出勤の時間なのです。
今後は「忙しいから」は通用しない
これまでは、36協定に「繁忙期は残業あるから」といった文言さえ書き加えておけば、残業の上限については制限がなかったのですが、来年4月からは、原則は、月45時間・年360時間
※臨時的な特別の事情がないと超えることはできない
※月45時間を超過する月は年間6ヶ月まで
また、臨時的な特別な事情により、労使が合意する場合でも、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働含む)
・月100時間未満(休日労働含む)
を超えることはできない
(一部業種を除く)
といった新様式に変更されます。
ではどうすればいいの?
★まずは勤怠管理を確実にしましょう上記の規制がかかるということは、「従業員の方々がどれだけ残業しているのかを把握しておかなければならない」ということです。
「ウチにはタイムカードがないから」と放置しておくと、後々痛い目に遭い兼ねませんので、この機会にタイムカードを導入して勤怠の管理をされることをお勧めします。
(今時は「未払い残業を請求しませんか?」というCMをちらほら見かけるようになりましたね。)
★就業規則で就業時間、残業の定義を明確化しましょう
就業規則とは、いわば会社の憲法のようなものです。法律的には、常時10人未満の事業所には作成義務はありませんが、職場のルールを文章にしておくと、後で「言った言わない」のトラブルになることを避けられるので作成されることをお勧めします。
ひな形は「厚生労働省 モデル就業規則」と検索するとダウンロードできます。ガイドも付いていますので、ひとまず作成することは可能ですが、社会保険労務士がヒアリングすることによって、より職場にマッチングした就業規則を作成することもできますので、ぜひご相談ください。
★残業は「承認制」にしましょう
残業には2種類あります。それは「緊急性のある残業」と「緊急性のない残業」です。どうしても残業せざるを得ない場合は、上司が承認した場合のみ残業を認めるルールにし、就業規則にも明記するとよいでしょう。
ここで大事なのは、その仕事がどのくらいの時間で終わるのかを事前申請してもらうことです。そうすれば、業務に時間の観念を持たせて、「その時間に終わらせる意識」を持ってもらうことができます。その意識を業務全体に少しずつ広げることで、「定時までに仕事を終わらせる」意識へと徐々に変えていってもらうのです。
★残業代は「生活費」?
「残業代が減ると生活に影響する」という方もおられるでしょう。冒頭で述べた通り、残業代は建前的には会社へのペナルティなのですが、現実的には、そうした残業代を生活費に充てている方もいらっしゃると思います。
残業代が減って、なおかつ生産性が上がり、利益も確保できている場合には、会社として、従業員の方に還元するという方針を示すことが必要です。浮いた残業代を会社がプールしてしまうようでは、従業員の方々の努力も浮かばれませんので、ご配慮いただく必要があります。
このように、確かに法律は厳しくなるのですが、考え方次第で生産性を上げるきっかけになります。もし自社だけで解決が難しい場合には、社会保険労務士にご相談くださいね!
社会保険労務士有資格者
山口 善広