休日と休暇の違い
そもそも、「休日」と「休暇」は法律上明確に異なる。休日とは労働義務のない日、休暇は労働義務がある。よって休暇は単に、労働義務が免除されているに過ぎないのだ。さらに休日は、「法定休日」と「法定外休日」に分類される。法律上与えなければならないのが法定休日で、就業規則などで規定されているのが法定外休日である。休暇は、法律上定められた年次有給休暇など一部を除いて与える義務はなく、ましてや有給にする必要もない。
いわゆる「夏休み」に関して言うならば、就業規則等で夏季休日を定めているならば与える義務が発生するが、定めていない限りは与える義務も発生しない。つまり、「夏休みが欲しい場合は有休を申請を」としても、法律上は全く問題ないということになる。
年次有給休暇の計画的付与
必ずしも夏休みを与える義務はないとはいえ、帰省や家族旅行、その他様々な予定を組んでいる、または組まざるを得ない従業員も多いだろう。加えて、夏休みがないと、仕事に対するモチベーションにも関わるかもしれない。そういった場合、「年次有給休暇の計画的付与」をしてはどうだろうか。これは労使で協定を締結することにより、1年のうち特定の時期に有給休暇を取得させることができるという制度だ。
※計画的付与の条件
・就業規則などにより計画的付与を規定すること
・以下の内容を盛り込んだ労使協定を締結すること(労働基準監督署への届け出は不要)
(1)計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
(2)対象となる年次有給休暇の日数
(3)計画的付与の具体的な方法
(4)対象となる年次有給休暇を持たない者に対する取り扱い
(5)計画的付与日の変更
こと夏休みに関していうと、例えば「〇〇事業部は8/13~8/15、△△事業部は8/20~8/22に年次有給休暇を付与する」、「8/13~8/16を年次有給休暇として計画的に付与をする」などと定めることで、効率的に消化させることが可能になる。
まとめ
ただしここで注意したいのは、これまで「休日」としていた夏休みを「年次有給休暇の計画的付与」とすると、それはつまり、働く義務のない休日が減少することを意味し、労働者にとっては労働条件を不利益に変更されたことになる。労働条件の一方的な不利益変更は違法である。何より、流行語大賞にもノミネートされるくらい「働き方改革」という言葉が浸透している昨今、会社の都合で一方的に休日を減らすのは各所から反発を招く恐れもある。有給休暇の計画的付与は、従業員が夏休みを取るために有効な手ではあるが、事前説明や質疑応答の場を設けるなど、しっかり準備を整えてから実行したい。社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭