公務員が設計する民間企業の休職制度
以上のように、病気休暇制度は有給の特別休暇という福利厚生的機能を持ち、休職制度は分限処分の一形態として制度化されている。本来は全く異なるものであるが、実際の運用では「病気休暇90日(給与100%)→休職3年(1年:給与80%・1.5年:給与67%・0.5年:給与67%)が接続し、実質的に給与が保障される期間が3年3カ月にも及ぶという、極めて恵まれた労働条件となっている。一方で、中小企業の場合、有給の病気休暇を制度化している企業はほぼ皆無であり、休職制度がある企業においても、健康保険の「傷病手当金」が支給されるだけで、休職期間そのものは無給の場合がほとんどだ。また、有期労働契約社員向けの休職制度については、多くの企業が制度化していない。中小企業にとって重荷以外の何物でもないからだ。
同一労働同一賃金という美名の下に、裕福な環境で温温としている公務員が、自分たちの制度をスタンダードとして中小企業にあてがってもらっても有難迷惑な話だ。中小企業としては、政策を立案する彼らの状況を理解し、知恵と知識で武装しながら、性急な判断は慎むべきだろう。近年は中小企業へ過大な負荷を強いる労働政策が相次いでいる。本当にこれでいいのだろうか?中小企業の雇用力を削ぐことに力を注いでいるようでは、日本の将来は危ういとしか言いようがない。
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典
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