2017年4月、一般社団法人人材サービス産業協議会は、企業で派遣社員の評価や教育、業務指示などに関わる人を対象とした「派遣社員の評価に関する派遣先担当者調査結果」を発表した。派遣先担当者が派遣社員に求めるスキルや、契約更新、処遇向上、正社員登用の際に評価する能力などについて調査したものだ。
労働人口における非正規雇用者の割合が年々増加する中、企業は派遣社員に対して何を求めているのか。企業にとっての派遣社員の役割について考察した。
スキルよりも人間性重視? 企業が派遣社員に求めること

必要度が高い派遣社員、求められるスキルとは

まず今回の調査において、派遣社員の必要度に関する質問への回答結果を見てみると、派遣先担当者の53%が、「派遣社員がいないと仕事にならない」「やや仕事にならない」と答えている。企業が派遣社員を使っている理由は様々であるし、派遣社員の待遇も会社によって違うのだろうが、現在派遣社員を活用している企業にとって、その必要性は高いようだ。


派遣社員に求めるスキルへの質問では、自由回答であったにも関わらず「対人スキル」という声が圧倒的に多かった。業界知識やITスキルなどの倍近い割合で、協調性やコミュニケーション力が求められている。
また、派遣社員の評価については、「まじめさ」「報告・連絡・相談ができること」「責任感」「社会人としてのマナー」など、社会人として当たり前ともいえる項目を重要視していると答えた人が8割以上にのぼった。一方で、「自分の考えを言える力」や「体力」をとても重要視している担当者は2割未満にとどまっている。

新卒採用との比較から見えてくる、派遣社員の役割

コミュニケーション能力が求められるのは、派遣社員に限ったことではない。一般社団法人日本経済団体連合会が発表している「新卒採用に関するアンケート調査結果」を見ても、「選考にあたって特に重視した点」のトップは「コミュニケーション能力」で、約9割もの企業が挙げている。コミュニケーション能力は、正規・非正規、社会人経験の長さなどに関わらず、今働くすべての人に求められているスキルと言えるだろう。
しかし、新卒採用で重視する項目では、主体性やチャレンジ精神も上位に挙がっているのに対し、派遣社員を評価する際にはそれらの項目があまり重視されていない。ここに、派遣社員の性質が表れていると考えられる。

正社員と派遣社員の違いの一つに「企業がかける教育コスト」が挙げられるように、経営者が派遣社員に求めているのは、今すでに持っている能力の範囲内でのパフォーマンスであり、伸びしろは求められていない。
派遣社員は基本的に、新人ではなくある程度経験を積んだ「一社会人」であり、企業の中で足りていない部分を埋める即戦力とされている。その場の要望に応じて、他の社員との連携をとりながら迅速に仕事を進めることが求められる派遣社員に必要なのは、個人の意見を主張することやリスクのあるチャレンジをすることではなく、慣れない人とでも円滑なやりとりができる力や、着実で確実な仕事をする力、というわけだ。
また派遣社員は、企業の直接雇用ではない性質上、正社員などのアシスタント的な役割を担うことが多い。人をサポートする仕事だからこそ、報告・連絡・相談を重視し、人の話に耳を傾けながらまじめに取り組む姿勢が、何より求められるのだろう。

両者にメリット?派遣社員の正社員登用制度

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