今の大学生・大学院生は、いわゆる2002年度から2010年度に実施されていた「ゆとり教育」を受けてきた「ゆとり世代」だ。

ゆとり世代にあたる2018年卒の学生たちが働く上で一番大切にしたいものが、「働きやすさ」であることが株式会社アイデムのアンケート調査で明らかになった。その理由とは一体何なのか。また、彼らがそのような考えに至るようになった社会的・時代的な背景も含めて考えていく。
働く上で大切にしたいもの 第1位「働きやすさ」年々増加傾向に ── 変化する就業観

働く上で大切にしたいものについて、直近3年間の変化

株式会社アイデムの人と仕事研究所が、就職活動中の2018年卒の大学生、大学院生へ就職活動に関するアンケート調査(2017年2月1日時点)を実施した。

「働く上で大切にしたいもの」について尋ねてみたところ、トップとなったのが「働きやすさ」で回答の56.1%。2015年卒の学生に同調査を行ったときは38.8%だったが、この3年間で1.4倍以上増加したことになる。また、「給与の高さ」については4年間で10%前後を推移しておりほぼ横ばい。一方で、「仕事の内容」が49.1%から33.6%と大幅に減少している。

以上のことから、2018年卒の学生は就職先の企業に対し、仕事内容よりも働きやすい環境を求めていることがわかる。彼らはある意味、現実的な思考を持っているとも言えるだろう。

ブラック企業問題で会社の実情を知ったのが原因か

このようにアンケート結果が推移しているのは、ブラック企業問題が一因となっているようにも思える。

ブラック企業が社会問題化したのは2013年以後のこと。厚生労働省は同年9月を「ブラック企業取り締まり強化月間」として対応に当たった。民間でも、同年7月にブラック企業の被害者を法的に支援するための「ブラック企業被害対策弁護団」が発足。9月には弁護士・研究者・社会運動家等が「ブラック企業被害対策プロジェクト」も設立された。まさに、官民一体となってブラック企業を撲滅し、被害者を救済しようという動きが見られた年だ。

「ブラック企業」の言葉が世間に浸透してきた中、2016年には大手広告代理店である電通の女性社員が過労自殺する事件が起き、同年11月7日同社が強制捜査を受ける事態となった。最新のアンケート調査はその直後の時期である2017年2月1~6日に行われていることから、これら一連の動きの影響はないとは言えないだろう。

働きやすさの内容は「社内の人間関係」等が上位に

では一体、学生のいう「働きやすさ」とは何だろうか?同アンケート調査によると、「社内の人間関係や風通しが良いこと」(50.8%)、「年間休日数が多いこと」(35.6%)、「残業時間が少ないこと」(31.8%)が上位にきている。これに対し、「成果が出たら評価してくれること」(15.0%)、「評価の基準が明確なこと」(6.8%)と自らの評価に関することはあまり目立たない。

仕事の内容や給与面より、いかに自分の所属する組織が自分の理想とする環境にマッチしているかが重視される傾向にある。すなわち、入社してすぐに快適な環境でストレスフリーに働けることが望まれているのだ。

また、年間休日や残業時間の少なさ、有給休暇のとりやすさにもこだわりを見せていることから、「会社には必要以上に束縛されたくない」「ワークライフバランスを重視したい」との思いが見て取れる。

長時間にわたり働くことが美徳とされていた時代は終わった。
「少々給料が安くても、無理せず仕事をしたい」という選択肢を選ぶ現代の若者は、企業に対するシビアな目を持っているとも言える。企業側も、そんな若者たちの希望に応えるべく、現在の勤務形態や労働条件の見直しを否応なしに迫られる日は近いのではないだろうか。

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