それは、新入社員に伝える続けるべきことがひとつだけあると。
このたったひとつだけ伝え、新入社員が実践することができれば、後は「放っておいても」成長するなと感じるのである。
それは「仕事の進め方に絶対の正解はない」ということである。
フラットな集団組織が生み出す弊害
学校という場所は集団組織である。集団組織で生きていくというと、人と人との関係性や守るべきルールなどを身につけられるようにも捉えられる。しかし、会社と学校が大きく違う点として、学校は何十人もの同じ学年の生徒がいる「フラットな」集団組織である。何かの行動をするとき、授業を受けるとき、常に横目で見ながら行動をするのだ。このフラット集団組織で12年間過ごすと、どういう結果になるかというと、自分だけが突出することを極端に嫌うようになる。
学校に出向き、内定者講習で全体に向けてこんな質問をする。
私「なぜ挨拶が大切なのでしょう?」
全体「・・・」
次に、ある一人の学生に向かって質問をしてみる。
私「なぜ挨拶が大切なのでしょう?」
学生「・・・」(笑顔で首をかしげる)
新入社員研修においても同じようなことがある。
私「なぜ身だしなみを整えることが大切なのでしょう?」
全体「・・・」
次に、ある一人の新入社員に向かって質問をしてみる。
私「なぜ身だしなみを整えることが大切なのでしょう?」
新入社員「お互いが気持ち良く過ごすため…?」
はじめは、こう思っていた。
「確かに、全体で発言をすることは勇気がいること。だから急に質問をされても答えられないのかな」と。確かに、いい大人でも大人数のセミナーで講師から問いかけられたとしても「はい!」と手を上げて答えられることは少ない。
しかし、「もう一つの原因」があるのだと、ある時、あるワークで気づいた。
新入社員研修で、あるワークをした時のことだ。「新入社員に求められる役割はなんだろう。(キーワード集を見せて)このキーワードの中から選んで考えてみよう」と言った。
するとどうだろうか。それまで問いかけられてもなかなか自分から進んで手を上げなかった新入社員が自由に積極的に発言をしたのである。「私は・・・と思います」「もちろんそれもいいと思うのですが、・・・という一面もあるのではないかと思います」と。
それを見て確信をした。
彼らは「発言をすることが恥ずかしい」ということだけではなく、これまでの学校教育の中で「間違ってはいけない」「正しく答えなければならない」という感覚が無意識のうちに植えつけられているのだと。
だからこそ、今回のように「明らかに正解はない」問いかけであれば、積極的に意見を言えるのだろうと。
新入社員に伝え続けるべきたったひとつのこと
社会人を1年でも経験した方はご存知だろう。多くの場合、仕事の進め方・考え方に「正しい答え」なんてないということを。正しい答えではなく、「相手がどう感じるか」「どうすれば相手が喜んでくれるか」ということを考えらえることが重要ではないだろうか。そこで、新入社員に伝え続けるべきたったひとつのこととは、「仕事の進め方に絶対の正解はない」ということ。
だからこそ、間違いを恐れて発言をしないというのではなく、自分で考えたことをどんどん積極的に発信をしていっていいんだということを伝え「続ける」必要があると思う。
まず頭で理解し、行動に移すことができたならば…その後の人生は「放っておいても」うまくいくのではないだろうか。
株式会社ブレインコンサルティングオフィス大阪営業所 所長
社会保険労務士 神野 沙樹