あらかじめ準備しておくべき内容を含めた、初期段階での対応をまとめてみた。
介護離職を防ぐには
①介護は突然やってくる前々から親の具合がよくない状態が続いている場合は、本人も心構えや自身の兄弟や親戚との連携ができているので、さほど問題はない。
問題になるのは、脳疾患や心疾患等の病気により『親が急に倒れた』場合である。まず仕事はそのままで、すぐに帰宅して病院に向かうのがほとんどだろう。
遠方であったり、重症であったりなど、状況によっては、数日から1週間、会社を休むことになる。直属上司が率先して、直近の客先とのアポ、重要な業務などを手早く引継ぐ必要がある。
②部署内の体制を整える
次に直属上司が中心になって、部署内の体制を整える。
不在従業員が次に出勤できるのがいつになるか、その後もどのくらい本人が介護に時間を割くことになるか、介護休業をとることになるのか、など、介護することになった従業員が『これまでのように仕事ができなくなった』場合に、だれがどの業務を分担するか、ということをまず考えておく必要がある。
そのためには、普段からそれぞれの担当している業務を明確にしておく、マニュアルを作成して、だれでもできるようにしておくなどの準備をしておけば、このような場合に慌てることなく、業務分担がスムーズに行える。
③本人から連絡があったら
この時点で、上司がどのような言葉をかけるか、ということが、今後のこの従業員が『仕事を続けるか、迷惑をかけるから、と介護離職するか』の分かれ目の第一歩である。
上司が伝えるべきことは、
・部署内で業務対応しているから、落ち着くまで介護に集中して大丈夫である。
・介護が落ち着いたら、会社に戻ってきてほしいと考えていること。
の2点である。
介護している従業員としては、急に仕事を何日も休むことになり、迷惑をかけていること、まだ初期段階で、この先の介護の状況も目算が立たず、まだまだ迷惑をかけること、など暗澹たる気持ちでいる場合が多い。
そこで会社側としては、皆は待っているから、会社に残って仕事を続けてほしいというメッセージを伝えておく。
④本人がいったん出勤=状況を確認する
本人が一時でも会社に立ち寄れる時間が取れたら、上司は本人と直接話す時間を設け、
本人や病親の様子、今後の予定など、答えられる範囲で聞き取り、会社側としてもできるだけ協力する旨を伝えておく。本人を取り巻く状況は、以下の例を見てもらってわかるように様々で、個人ごとに全く異なる。
親・本人・周囲の状況として考えられる例:人によって状況の組み合わせが違う | ||
病親の状況 | 本人の状況 | 周囲の状況 |
・入院が続く | ・本人しか介護者がいない | ・介護を分担できる配偶者がいる |
・転院して入院が続く | ・介護する親と同居している | ・配偶者はいるが介護を分担できない |
・退院して自宅介護 | ・介護する親は遠方に住んでいる | ・介護を分担できる姉妹(兄弟)がいる |
・退院して一時的に施設に入る | ・親は遠方に住んでおり、主介護者が別にいる | ・介護を分担できる親戚がいる |
・退院して施設に入所する | ・本人は介護をするつもりはない | ・兄弟(姉妹)・親戚はいるが介護は分担できない |
上司は本人から聞き取った内容を、経営者にも伝え、今後、本人が取れる手段として、
・介護休暇をとる
・勤務時間を減らす
・勤務日数を減らす
・部署を異動する
等いくつか選択肢を考えておく。ただし、高齢者の病状は変わりやすく、落ち着く場合もあれば、急な衰えで介護がより必要になることもあるので、状況に合わせて、柔軟に対応できるように考えておく。
⑤部署内の協力体制を強める
部署内では、休んでいる従業員がどのくらいで復帰できそうかを部署内で共通認識にし、直属上司がリーダーシップをとって協力体制を強める。
場合によっては、臨時に人を雇用する、他部署から一時ヘルプしてもらう、など経営者とも話し合う必要も出てくる。
以上のように、介護の初期段階では、直属上司の役割がかなり重要になってくる。介護離職を防ぐには、まず直属上司の心ある対応が一番大切である。
ふくすけサポート社会保険労務士事務所
社会保険労務士 産業カウンセラー 仕事と介護コンサルタント
森大輔