株式会社リンクアンドモチベーションは2024年2月、「マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性」に関する調査結果を発表した。対象は2015年1月~2022年5月に同社グループにおいて実施したマネジメントサーベイに回答したマネジャー182名で、マネジャーに対する360度マネジメントサーベイ結果、および対象マネジャーが管理する組織のエンゲージメントスコアを用いて調査が行われている。本調査結果より、マネジャーに対する上司・部下それぞれからの評価が相互に与える影響や、従業員エンゲージメントとの関係性などが明らかになった。
“組織マネジャーに対する評価”と“エンゲージメント”の関係性とは? リーダー・マネジャーは自身の上司・部下に対しどう振る舞うべきか?

本調査の実施背景としてリンクアンドモチベーションは、近年調査研究が進められている「従業員エンゲージメント」について、「マネジャーが部下に行う行動が従業員エンゲージメントに及ぼす影響に関する議論」は行われているものの、「マネジャーを監督する上司からの評価を含めた研究」があまり行われていない点を挙げている。これを踏まえて同社は、マネジャーに対する部下や上司からの評価と従業員エンゲージメントの関係性を調査し、望ましいマネジメント方法についての示唆を得ることを目的に、本調査を実施したという。

調査における分析方法は、以下の通りだ。

【調査① マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性】
「マネジャーに対する360度マネジメントサーベイ結果」と、「そのマネジャーが管理する組織のエンゲージメントスコア」を用い、マネジャーの上司からの評価が部下からの評価に及ぼす影響、部下からの評価がエンゲージメントスコアに及ぼす影響について調査。

【調査② マネジャーに対する上司からの評価と部下からの評価の関係性】
「マネジャーに対する360度マネジメントサーベイ結果」を用い、特定の要素に対する部下からの評価が高い場合における、上司からの評価が部下からの評価に及ぼす影響の変化について調査。

「部下からの評価」を高めるマネジメント、下げるマネジメント

調査結果の1つ目、「マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性」について見ていくと、マネジャーの上司による「役割遂行や率先垂範」、および「部下の成長支援」に関する評価は部下からの評価を高めるのに対し、「自社の戦略や課題の確認」、「業務への要望や改善点の確認」、および「外部情報の提供」に関する評価は、部下からの評価を下げる傾向にあることがわかったという。

また、部下による「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、および「動機付け」に関する評価は、エンゲージメントスコアを向上させる傾向にあったようだ。
マネジャーに対する周囲からの評価とエンゲージメントの関係性

部下評価に及ぼす“負の影響”を緩和できるマネジメント策とは

続いて同社が示した調査結果の2つ目、「マネジャーに対する上司からの評価と部下からの評価の関係性」では、部下による「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、および「動機付け」に関する評価が高いとき、マネジャーの上司による「自社の戦略や課題の確認」、「業務への要望や改善点の確認」、および「外部情報の提供」への評価が、部下評価に及ぼす“負の影響”を緩和、または良化させる傾向にあることが示唆されている。
マネジャーに対する上司からの評価と部下からの評価の関係性

「エンゲージメント低下」を抑制するために考えるべき“マネジャーの役割”

上述した調査結果をまとめると、下記の通りだ。

●マネジャーの上司からの「役割遂行や率先垂範」、「部下の成長支援」への評価は部下からの評価を高める一方、「自社の戦略や課題の確認」、「業務への要望や改善点の確認」、「外部情報の提供」への評価は、部下からの評価を下げる傾向にある。

●部下からの「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、「動機付け」への評価は、エンゲージメントスコアを向上させる傾向にある。

●部下からの「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、「動機付け」に対する評価が高い場合、マネジャーの上司からの「自社の戦略や課題の確認」、「業務への要望や改善点の確認」、「外部情報の提供」への評価が部下評価に及ぼす負の影響を緩和、もしくは正に転じさせる傾向にある。


以上の調査結果に対し、リンクアンドモチベーションは、「マネジャーには、組織における上下/左右の情報の結節点としての機能が求められるものの、過剰に上司の方針や意図を確認したり、上司に状況を報告したりする行動は、結果として部下からの評価を低下させるリスクがあり、得た情報をもとに自身で考えて行動し、部下の成長を支援するといった行動が重要である」との考察をまとめた。またその上で、「部下の状況を把握しながら部下に情報を伝達したり、部下への動機づけを十分に行ったりしている場合には、上司への方針確認や状況伝達が良い方向に働く可能性があり、マネジャーが上司ばかりを見てマネジメントを行うと、部下からの評価の低下や、従業員エンゲージメントの低下につながる可能性がある」との見解も示している。
本調査結果から、マネジャーが自身の上司から「役割遂行や率先垂範」、「部下の成長支援」における高い評価を受けている場合、部下からの評価も高まる傾向にあることがわかった。また、部下からの「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、「動機付け」における高い評価が、エンゲージメントスコアを向上させる傾向も示された。加えて、部下による「戦略情報の提供」、「進捗状況の確認」、「動機付け」に関する評価に対する“負の影響”を抑制する要素として、マネジャーの上司による「自社の戦略や課題の確認」、「業務への要望や改善点の確認」、「外部情報の提供」への高い評価が有効であることも示唆された。企業内の組織運営にあたるリーダー職・マネジメント職は、中間管理職としての約割や“上下”への振る舞い方に迷うこともあるだろう。本調査結果を参考に、“エンゲージメントを高めるマネジメント”を自身の行動に落とし込んでみてはいかがだろうか。

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