具体的な3つのステップは「経営層のコミットメント」、「実態の把握と対応」、「情報発信」
超高齢社会の日本では生産年齢人口が減少し続けており、仕事をしながら介護に従事する、いわゆる「ビジネスケアラー」の数は増加傾向だ。予想では、2030年時点でビジネスケアラーの数は約318万人にのぼり、経済損失額は約9兆円と試算されている。介護者本人への心身負担が発生していることに加え、経済全体で見ても、介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失の影響は甚大である。また、従業員一人ひとりが抱える介護の問題は、本人のパフォーマンスの低下や介護離職などにつながり、結果として企業活動の継続にも大きなリスクを生じさせる。従業員のキャリア継続だけではなく、経営面でも「人的資本経営の実現」や「人材不足に対するリスクマネジメント」などに有効なことから、企業が仕事と介護を両立できる環境を整備することが重要である。
経産省はこのような背景から、ビジネスケアラーを取り巻く喫緊の諸課題に対応する必要があるとして、2023年11月から「企業経営と介護両立支援に関する検討会」を開催し、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を策定した。
本ガイドラインは、企業における仕事と介護の両立支援を先導していくことが期待される経営層を対象にしたものだ。仕事と介護の両立を巡る問題は、高齢化の進展に伴ってまさにこれからが本番となり、その解決には全ての企業の協力が必要となる。一方で、介護両立支援の充実について企業経営上の優先順位が低いことが要因となり、企業内での取り組みが進まないという構造的な課題が存在する。これらを解決するためには、経営者のコミットメントが不可欠である。
同省が企業の両立支援の進め方として具体的な取り組みステップを示した、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」のポイントは以下の図の通りだ。