大手を中心に活用する企業が増えている、「アルムナイ採用」。かつての日本では終身雇用制度が根付き、同じ会社で働き続けることが当たり前とされていました。しかし、近年は「終身雇用制度の崩壊」、「転職者の増加」などといった人材流動化の流れから、人手不足に悩む企業において「アルムナイ採用」が注目されています。本記事では、最近の導入事例やメリットについてお伝えします。
大手企業が活用する「アルムナイ採用」。制度の意味やメリット、最近の企業導入事例は?【事例まとめ】

「アルムナイ」とは?

「アルムナイ」とは、“卒業生”や“同窓生”といった意味を持ちますが、人事分野では定年退職者以外の「中途退職者」を指す言葉として使われています。

終身雇用制度が主流だった頃の日本では、“同じ会社に一生勤務すること”が当たり前の風潮がありました。しかし、転職がポジティブに捉えられるようになったことで、いわゆる“出戻り社員”も歓迎される風潮へと変化してきました。

このように、一度退職した人材が戻りやすい環境を整えるための手段として現在注目されているのが、「アルムナイ採用」です。自社のアルムナイネットワークを構築して定期的な交流会を開催するなど、企業と退職者がコンタクトを取り続けることで、即戦力となる人材の確保につながるといわれています。

アルムナイネットワークを導入する企業は増えている

昨今、アルムナイネットワークを導入する企業は、大手や外資系を中心に増加しています。直近では、2024年1月18日に「三菱電機株式会社」と「味の素株式会社」の2社で同ネットワークの新設が発表されました。概要は以下の通りです。

【三菱電機株式会社】
三菱電機株式会社では、「Re-MELCO~アルムナイネットワーク~」を新設し、運用開始を発表しました。これまでも退職者を再び雇用する「カムバック採用」を導入していましたが、退職後のつながりを仕組みとして維持できなかったことから求人・求職ニーズを相互共有できず、その実効性は十分ではないという課題がありました。

新設された同ネットワークでは求人情報をはじめとした定期的な情報提供を行い、社内外の幅広い経験や高い専門性を併せ持つ人材との“継続的なつながり”を強化する考えです。これにより、再雇用機会の拡大を図るとしています。

あわせて、これまで「最終学歴卒業後3年以内」としていた第2新卒採用の応募基準を廃止しました。これにより、求職者が自身のキャリア志向に合わせて、「新卒採用」と「経験者採用」の選考区分が自由に選択できるようになったとのことです。同社は、こうした施策を通して多彩な人材の採用をより強化するとともに、人的資本の価値を最大化する人材戦略を推進し、事業を通じた社会課題の解決に貢献していくとしています。

【味の素株式会社】
味の素株式会社では、「味の素アルムナイコミュニティ」を新設し、アルムナイを含めた人材ネットワークの構築を開始したと発表しました。多様な「個人」が“志”でつながり合うネットワークを社外に拡大する取り組みの一環として、同コミュニティの新設に至ったとのことです。

同コミュニティでは同社の業績のほか、新たな取り組み・キャリア採用・アルムナイにおける近況や発信内容などの情報閲覧、アルムナイ同士の情報交換が可能です。同社は、今後も人材資産に関するさまざまな取り組みを実施することで、ASV経営(事業を通じた社会価値と経済価値の共創)を推進していきたいとしています。

アルムナイ採用にはどのようなメリットがあるのか

企業におけるアルムナイ採用導入の最も大きなメリットは、「コストを抑えながら即戦力人材を採用できること」です。新たな人材を採用する場合、採用にかかる費用だけでなく、採用後も教育費といった費用も発生します。即戦力を募る場合には、より求人や育成に費用がかかります。しかし、アルムナイは社内事情に精通しており、すでに仕事の進め方や知識を得ています。アルムナイの活用は、こうした採用までにかかる費用や採用後の教育費を抑えることにつながるでしょう。

また、アルムナイは社外での経験から、新たな視点を獲得している可能性もあります。他社で得た経験やスキルをもとに違った視点から自社の問題へ向き合うなど、社内に新しい風を吹かせてくれるかもしれません。

さらには、アルムナイを通してリファラル採用につながるケースもあります。アルムナイ経由で人材を紹介してもらうことで、採用活動の負担を減らしつつ優秀な人材との出会える可能性も高まるでしょう。

過去のアルムナイ採用導入企業事例

<野村ホールディングス株式会社>
野村HDのアルムナイネットワークでは、登録者に対しプラットフォームを通じて定期的なニュースやキャリア採用などの情報を発信しており、イベント開催等を通じて登録者同士の交流の場を設けることも可能だといいます。

同ネットワークを活用しアルムナイとの関係を維持していくことで、さらなる人材確保の選択肢を拡大していく考えです。また、登録者にとってもプラットフォームでの交流を通じた情報共有などのメリットがあることから、採用におけるブランディング強化も図っていきたいとしています。

<株式会社ニトリホールディングス>
ニトリHDの同ネットワークは、アルムナイに対して定期的に同社のニュースやキャリア採用情報を発信し、会社の変化や進化を共有しています。あわせて、ネットワーク上で互いの情報交換やイベント開催等の交流の場を提供することで、“アルムナイ同士”または“アルムナイと現役社員”が持続的に関係性を確立できるような支援するとのことです。

同ネットワークの導入により、これまで導入していた退職者を再雇用する「ジョブ・リターン制度」の利用活性化を目指すとともに、顧客への新たな付加価値を提供するアイデアや機会を創出する場にしていきたいとしています。

<富士通株式会社>
富士通株式会社の同ネットワークは、登録者に対して同社のイベントやニュース、求人などの最新情報を提供するほか、親睦と交流の場として活用されています。本ネットワークによって、退職者とのつながりを大切にしながら新たな関係性の中でともに成長し、よりよい未来を築いていく考えです。

同社では「カムバック採用」も行っており、一度退職した人が再入社して働くというキャリアパスを積極的に呼びかけているそうです。
アルムナイネットワークを構築することで、一度退職した人材が戻りやすい環境を整えることができ、即戦力人材の獲得にもつながるでしょう。人材不足に悩む企業では、アルムナイの活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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