■大手クレジットカード会社、同社と取締役ら4人を東京地検に書類送検。
※労使協定で取り決められた月80時間の残業時間を超える、1か月当たりおよそ90時間から147時間の違法な残業をさせていた労働基準法違反の疑い。
■全国に展開する靴の販売店、同社と労務担当取締役店舗責任者らを東京地検に書類送検
※同社は労使協定で取り決められた月79時間や法定労働時間を超える月97~112時間の残業をさせていた労働基準法違反の疑い。
等々、相も変わらず労働法関連のニュースがマスコミで取り上げられることが多い。
「長時間労働」改善への提言

長時間労働から抜け出すヒント

政府も過重労働撲滅特別対策班を組織するなど、長時間労働改善に対する取り組みはいっそう重要な経営課題であるが、有効な対策を打ち出せている企業は少ないのではないか。
そこで、長時間労働から抜け出すヒントをいくつか紹介したい。

1)交通費から住宅手当への転換
インターネットメディア事業の大手・(株)サイバーエージェントでは、「2駅ルール」という家賃補助制度がある。勤務しているオフィスの最寄駅から各線2駅圏内に住んでいる正社員に対し月3万円を支給している。通勤定期代(交通費)として支払っても、家賃補助(住宅手当)として支払っても、会社としての支出は大きく変わらない。
Acroquest Technology(株)でもオフィスから徒歩15分以内に住んでいる社員には家賃補助制度がある。さらに、オフィス移転の際に会社の近くに引っ越してくる社員に20万円を支給した。

会社の近くに住むことを奨励することで、コミュニケーションの向上や通勤における疲労軽減をすることができる。長時間労働の削減に直結するとは言いきれないが、結果的に業務効率が改善し、残業時間の削減につながることが期待できる。

2)分業化・見える化・IT化への投資
残業が減らない理由(言い訳)として「その人にしかできない仕事が多い」というものがある。業務を抱え混み過ぎて長時間労働となる現象は、特に中間職・リーダー職において多い。

ところが実際にその社員の業務を書き出してみると、誰にでもできる簡易な業務が含まれていることが多々ある。
例えば、「持参→郵送」「無期限→期限管理」「手作業→PC入力」などだ。
それら基本事項を洗い出し、分業化・見える化・IT化に対してコストをかけたほうが、残業代支払いよりも有意義ではないか。

分業化・見える化・IT化への投資とは、具体的には「各職種の職務分析を専門家に依頼する」「ファシリテーターに依頼するなどし、分業化について客観的に分析するミーティングを開く」「ITによる社内情報共有ツール構築を専門業者に依頼する」などが考えられるが、上記のような基本事項は投資する必要もない。
普段何気なく行っていることに少しの疑問を持ってみればわかることだ。

3)受注する仕事の費用対効果の検討
仮に、分業化・見える化・IT化をしても残業をしなければ処理できないような業務をクライアントから受注するということは、会社が残業代支払いリスク(未払い)・健康リスク(労災、精神疾患等)等の様々なリスクを負わざるをえない。
これらリスクと引き換えに受注するべきか否か、「ヒト」に焦点をあてて再検討してもいいのではないだろうか。


言うまでもなく長時間労働を放置していると、社員の健康被害や労使トラブルの危険性が高まる。さらに言えば、長時間労働=会社の業績向上ではない。
「中小企業は長時間働いて当たり前」「昔なんて~」という考えはもはや通用しない。

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