平成28年の法改正について
また、来年の平成28年4月からは健康保険の標準報酬月額の上限及び標準賞与額の年間上限が引き上げられる。現在、健康保険の標準報酬月額は、5万8千円から121万円までの47等級がある。月額の給与がいくら高くても上限である47等級(121万円)で保険料の負担が打ち止めとなっていたが、来年からは、3等級追加となり、上限額が139万円に引き上げられる。標準賞与額については、現在の年間上限額540万円が573万円に引き上げられる。さらに、来年の10月からはパートタイマーの社会保険の加入要件が拡大される。
具体的には、以下の5つの要件を満たせば加入となる。
① 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
② 月額賃金 88,000 円以上(年収 106 万円以上)であること。
③ 当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。
④ 通常の労働者(※適用拡大前の基準で社会保険適用対象となる労働者の数で算
定。)の総数が常時 500 人を超える事業所であること。
⑤ 学生ではないこと。
働く人にとってはもちろん、会社にとっても社会保険料の増加は頭の痛い問題である。では、社会保険料の負担を減らするために、何か対策はできないのであろうか。
社会保険料の削減法について
これからご紹介するのは、実際利用されていることが多い手法である。もちろん合法であるし、すぐに対応できるものもあるので、要チェックして欲しい。①4月から6月に支給される残業代を抑える。
1年間の社会保険料は4月から6月の給与支給額により算定され決定する。給与支給額に含まれる残業代も社会保険料算定の基礎となるので、その時期の残業を減らすことで、社会保険料の削減につながることがある。これは知っている人も多いかもしれない。
②昇給時期を見直す。
①と同様の考え方で、1年の社会保険料は4~6月の給与支給額により算定されるので、昇給はその時期を外すことで、社会保険料の削減につながる場合がある。
③給与額決定の際は、報酬月額の範囲を確認する。
社会保険料は、会社が実際支給する毎月の給与額ではなく、報酬月額の範囲で定められた、いわゆる標準報酬月額に対して保険料率を乗じて計算する。この報酬月額の範囲を意識することで、従業員の手取りを増やし、会社の負担額を下げることができる。
④標準報酬月額の等級差を配慮する。
昇給の際、昇給前と昇給後の標準報酬に2等級の差があれば随時改定の対象となり、保険料が高くなってしまう。1等級の差で収まるよう標準報酬月額を配慮し、昇給額等を決定することで、社会保険料増加を抑えることができる。
⑤「住宅手当」を「借上げ社宅」にする。
住宅手当を支給している場合は、借上げ社宅とし、家賃を徴収する。そうすることで、社会保険上の『報酬』を下げ、社会保険料を削減できる。
代表的な社会保険料削減法をあげてみたが、ウルトラCというのは残念ながらないのかもしれない。しかし、社会保険料負担の増加は、個人はもとより会社にとっても大きな経営課題となっている。平成16年から平成29年までの厚生年金保険料の増加率は約5%である。年収500万円の場合、その増加額は25万円。個人としてみた場合にも、社会保険料は労使折半なので、いつの間にか12万5千円ほど手取りが減っていることになる。
さらに健康保険料率についても今後は増加が見込まれる。
知らないで社会保険料を多く負担をする結果とならぬよう、働く人も企業も社会保険料決定の仕組みを正しく理解し、対策していくことが必要かもしれない。
松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子