株式会社メンタルヘルステクノロジーズは2022年8月23日、「産業医のコロナ前後の変化」を探った調査結果を発表した。本調査は2022年7月12日~13日に実施され、産業医106名から回答を得たもの。調査結果から、コロナ禍以降に産業医が受けた相談の実態と、現時点で産業医が感じている課題についてフリーコメントを交えて紹介する。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ

産業医の6割が「コロナ禍前と比べ相談件数が増加した」と回答

新型コロナウイルス感染拡大により、ストレスを感じる場面が増えた人もいるだろう。では、働く人に向き合う産業医が感じている「メンタルヘルス」の実態はどうなのだろうか。まず、メンタルヘルステクノロジーズは「新型コロナの流行以前(2020年2月前)と現在での相談を受ける件数の変化」について尋ねた。すると「非常に増加した」が24.5%、「やや増加した」は38.7%となり、「増えた」と回答した人は計63.2%となった。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ

5割以上が「相談内容の変化があった」と答える

続いて、「新型コロナ前後の相談内容の変化」を尋ねると、「非常に変化があった」が23.6%、「やや変化があった」が33%となり、「変化した」と答えた人の合計は56.6%と半数を占めた。

産業医自身のフリーコメントからは、「心の変化に対する相談が多くなった。」、「少しでも不調があればコロナウイルス感染を疑い相談に来る方が増えた」、「うつ状態の相談が増えた」といった変化を感じていることがわかった。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ

産業医が受ける相談内容のトップは「長時間労働への面接指導」

さらに、「産業医として、企業から相談される内容が多いもの」を尋ねたところ、1位は「長時間労働への面接指導」で45.3%、2位は「復職者との面談」で33%、3位は「感染症予防・テレワークに関する相談」の32.1%となっていた。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ

人事と連携する役割の産業医が感じる「コロナ禍での人事業務の増加」

さらに、「産業医として仕事をする上で、感じている課題」を聞くと、最も多かったのは「人事業務の負担増による人事部門との密な連携が難しい」で31.1%が回答。以下、「1社に割く時間があまりない」(27.4%)、「テレワークに対応する知見がない」(26.4%)、「テレワークの従業員の状況がわからない」(24.5%)が上位回答となっていた。

それ以外の自由回答では、「労働者の時間外勤務が多い」、「コンプライアンスが徹底できない」、「オンラインでのフォローがしづらい」などの意見もあげられた。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ

4割が「休職復帰の社員との相談」が今後の産業医に求められると回答

最後に、同社が「今後、産業医に求められてくると役割はどのようなものだと思うか」という質問をしたところ、トップは「休職復職の社員との相談」で45.3%が回答。以降は「テレワークのための組織的なメンタルヘルスケア体制」と「健康経営のための体制構築」がともに42.5%、「心理的安全性が確保できる職場作り」が30.2%、「ウェルビーイングに向けた取り組みの提案」が27.4%となっていた。
コロナ禍で“産業医への相談”は増加傾向。産業医の4割は「テレワーク環境でのメンタルヘルスケア体制」に課題を持つ
本調査から、新型コロナ流行に伴い、産業医への相談が増えているという実態が明らかとなった。さらに、産業医自身が、人事部門との連携や新しい働き方への対応に課題を感じている様子もうかがえた。「産業医が受ける相談内容も変わってきている」という今回の結果を受け、産業医を交えた現状把握の機会を設けてみてもいいかもしれない。

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