私の考える「デキる経営者」共通項3点
1.自らの答えを持って相談する!筆者の事務所では日々労務問題が持ち込まれる。その際、内容にもよるが、デキる経営者は、問題に対処する何らかの自分の“解”を持った上で相談に来られることが多い。そして更に、頭の中では筆者がアドバイスした点を勘案しつつ自らの解を客観的に分析した上で、自らの解に不都合があれば修正する作業を協議の最中に行っている。だから決断力があり、解決するまでのスピードが非常に速い。時間は有限の経営資源である。問題に対処する時間というのは、ある一面では非生産的な時間と言える。生産的な事柄に時間配分を費やすべく、「時間」を意識した行動の表れと言うことができよう。
2.「◯◯ない」とは言わない!
「知らない」・「できない(無理・不可能だ)」・「聞いてない」・「わからない」という言葉を決して遣わない。自身の経営する会社のことであれば、どんな些細な事柄であってもだ。口でどうこうではなく、最終的な全責任を自らが追っていることの覚悟である。この覚悟で臨むからこそ、社員達もついてゆく。
例えば、昨今の度重なる法改正で労働環境は目まぐるしく変化しており、以前に比べて経営がしづらくなっていることは否めない。法改正をすることが良いことなのか、悪いことなのかは別として、対応しなければ違法状態に陥るのであれば何らかの手を打たなければならない。この時、デキる社長は“どのようにしたら対応が可能か?”あるいは“問題がクリアされるか?”という視点で行動に移す。今すぐに対応できない箇所はピックアップした上で計画を立てる。これに基づき全社に移行の段取りの号令をかけ、その後のチェックも欠かさない。
これがダメな社長の場合、自らが動けば簡単に解決できるような問題であったとしても「(担当者に任せているから)自分はわからない」、「知らない」を繰り返して問題から逃げてしまう。また、自社の経営環境や景気等の外的要因を持ち出し「できない」として問題を先送りする。
3.自社社員への敬意!
求人募集に応募した求職者に対し、応募してきてくれたことに対し感謝の意を伝えてから面接に入る社長がいる。面接中の対応も、応募者と対等な関係を築きながら話を進め、雇ってあげようかどうしようかといった上から目線な態度は決してとらない。
在籍する社員に対しては、日々自社の仕事に精を出してくれていることに感謝し、社員が気持ち良く働けるようにするためにはどのような環境にすべきかを不断に模索し実行に移している。なぜなら、社員の労働環境における意思決定を持つのは経営者に他ならないからだ。そして、社員の満足を第一に考える。会社で大切にされる社員は、会社のお客様を大切にしようとする。社員が気持ち良く働ける職場環境が創造できれば、経営効率があがることを熟知しているからである。
もっとも、ここで断っておきたいのは、単に社員に迎合している訳ではないということだ。問題社員がいれば厳正な対処をするし、苦渋の決断もする。しかし厳正対処の流れの中においても、一方的に切り捨てるのではなく、事情を聴いて可能な限り守ろうとする。自社のために働いてくれる貴重な社員の一人だからだ。
一方のダメな社長は、自らの経営者としての能力は棚に上げ、自社の社員をバカ呼ばわりし、お客様第一!と言って社員には見向きもしない。会社に大切にされない社員がお客様に満足を与える仕事をしようと思うだろうか。
おわりに
最後に総括しよう。上述したこれらこそ、リーダーシップに係る一つ一つの具体的な思考・行動であると筆者は考える。そして、これらは経営者にしかできない事項である。換言すれば、これらの思考・行動をとる(あるいは、とらねばならない)から経営者なのだ。どれもみな当たり前のことを今さら…と思われたとしたら、経営者としての職責を全うされている証だろう。しかし、当たり前のことこそ簡単なようにみえて実際できていないものである。生意気にも「デキる経営者」をテーマに共通項を示したが、筆者自らの襟を正す意味でも執筆したことにご容赦いただき、今後の参考としていただけたら幸甚である。
SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣