10年間で残業時間は減少、有給消化率は改善傾向に
働き方改革の推進によって、「長残業時間の是正」や「有給休暇取得推奨」が進められているが、10年間で働き方はどう変化したのだろうか。まず、本レポートで「10年間の月間平均残業時間の推移」を見ると、2012年から2015年にかけて、月の平均残業時間は40時間以上だった。しかし2016年以降は40時間を切り、2021年には24時間まで減少。2012年と2013年のピーク時と比べると、22時間も減少していることが判明した。
年代別の残業時間は、10年前と現在では逆転現象が見られる
続いて同社は、「残業時間と有給消化率の推移」を年代別に比較している。「残業時間」では、10年前に最も残業時間が多かったのは20代の「48.5時間」となり、最も少ない40~50代の「40.1時間」とは8時間以上の差があった。しかし、その差は年々縮まっていき、2021年では20代が「23.5時間」で最も少なく、その反面40~50代は「24.3時間」となり、逆転している。
同社は、若い世代を中心に「ワーク・ライフ・バランス」を重視する傾向が強まったことや、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及し、自身で業務時間を調整しやすくなったことがこの結果に影響した、という見解を示した。
有給消化率は全体的に改善したが、年代別にみると顕著な差が
また、「有休消化率の推移」を年代別に比較した結果では、20代と他年代の差が開いたことが見てとれる。10年前は、消化率はすべての年代で40%程度だったが、2021年の結果では、「20代」が63.3%、「30代」は57.4%、「40~50代」は56%だった。2019年の労働基準法の改正により、企業に対して、10日以上の有休を付与している労働者に「年間5日間」は必ず有休を取得させることが義務付けられた。このことが、若手の有給消化率の伸びに影響しているようだ。業界別の残業時間は、10年間で30時間以上減少した業界が多数
さらに、同社は「業界別」に残業時間の変化をまとめている。10年前と比べ大きく残業時間が減少した上位の業界は「建築・土木・設備工事」(-37.6時間)、「コンサルティング・シンクタンク」(-36.8時間)、「放送・出版・新聞・映像・音響」(-35.1時間)、「広告代理店・PR・SP・デザイン」(-33.6時間)、「不動産関連・住宅」(-33.6時間)などで、いずれも10年で30時間以上減少したことがわかった。また、2021年時点で最も残業時間が少なかったのは、「ファッション・アパレル・繊維」の13.5時間で、以下、「旅行・ホテル・旅館・レジャー」の16.1時間、「小売(百貨店・専門・CVS・量販店)」の17.5時間が続いた。
業界別に見た「有給消化率」の結果は?
「10年前と比べ有休消化率が大きく上がった業界」をピックアップすると、「証券会社・投資ファンド・投資関連」(+29.7%)、「建築・土木・設備工事」(+29.5%)、「不動産関連・住宅」(+28.4%)、「小売(百貨店・専門・CVS・量販店)」(+27.7%)などが並んだ。2021年時点で有休消化率が高かった業界は、「通信・ISP・データセンター」の73.2%や「コールセンター・業務請負」の72.8%、「自動車・自動車部品・輸送機器」の71.8%などで、いずれも有給消化率は7割を超えた。特に、「通信」と「自動車業界」は10年前も6割以上と消化率は比較的高かったものの、この10年でさらにポイントを上げたことがわかった。