社員から家族の介護について相談があった場合、相談者が、男性社員か、女性社員かによって対応方法は異なる。一般的に女性社員は、周りの支援者をうまく活用するので、支援して欲しい内容が明確で、介護の状況を正確に知ることができる。
一方、男性社員は、家族の介護=家族の恥部と捉えている人がまだまだいる。会社には介護の状況を見せたくない、協力者を求めずに一人で抱えてしまう等、介護の状況が会社に正確に伝わっていないケースが多い。中小企業の『仕事と介護』では、社員本人がどのような状況かを正確に把握することがポイントになる。
2)社員に介護が必要になった場合の対応策
それでは、社員に介護が必要になった場合、会社はなにをすべきか?初めて介護を経験する社員はすべてが手探りで将来に対してとても不安になるので、社内ネット環境を使ってオープンに相談できる支援体制や、メール等で秘密裏に支援できる体制がベストである。ただ、中小企業では環境面を整えるのが難しいケースがある。日頃からコミュニケーションを取って、社員と色んなことを話せる風通しの良さが、支援する上で重要なポイントになる。
例えば、介護を経験した社員を相談サポーターとして募集して、介護経験者から介護ノウハウを共有できる交流の場を社内に設ける。介護で困った時に相談サポーターから適切なアドバイスを受けられると、社員の不安や負担は相当軽減される。これからは、親の介護は誰にでも起こりうる時代である。深刻な人手不足になっていく中小企業は、社員へのサポート体制をしっかり整えて、社員の定着に力をいれたいものだ。
3)サポートする担当者は誰が適任か?
サポートする担当者は、どのような人が適任だろうか?
①人事総務担当者が適任である。②社員の精神面のサポート・制度面の情報提供ができる人。③『あなたに会社で働き続けて欲しい』という明確なメッセージを発信できる人。④(他の社員から信頼されている)公平・中立な人。
親の体調が急に悪化したら?認知症が急速に進んだら?介護をしている社員は、今後どうしたら良いかわからないことだらけである。介護では、相談先がわからないケース、制度面でどのような支援が受けられるのかを知らないケースがある。その時々の困った問題に対して、的確な情報提供があるだけで、困っている社員にはとても助かる。
介護現場は感情のぶつかり合いもあるので、介護している社員は精神的に不安定になりやすい。相談しやすい体制があれば、社員一人で抱え込まなくなる。社員から愚痴も聞ければ、社員は精神的に落ち着きを取り戻せる。
会社のサポート体制が充実していることで、戻れる場所があるという安心感から、社員の会社への帰属意識が高まることにもなる。中小企業の『仕事と介護』では、精神面でのサポートと制度面の情報提供が両輪となり、介護する社員と一緒に考える担当者が重要な役割を担うことになる。
次回は、社員から介護が必要になったケースの続編について説明する。
ふくすけサポート社会保険労務士事務所 社会保険労務士
産業カウンセラー 森大輔