BCPを「策定している」企業は過去最高になるも、2割を割り込む
はじめに、「自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況」について尋ねた。すると「策定している」とした企業の割合(以下、BCP策定率)は17.6%となり、前年(2020年5月)から1ポイント増加した。BCP策定率は年々緩やかに上昇しており、今回調査で過去最高となったものの、未だ2割を割り込み、低水準にとどまっている状況だ。想定リスクは「自然災害」が5年連続で首位に
続いて、BCPを「策定している」、「策定中」、「策定を検討している」とする企業に対し、「事業継続が困難になると想定しているリスク」について尋ねた。その結果、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が72.4%で首位に。これは2017年から5年連続となる。次いで、新型コロナウイルスなどの「感染症」が60.4%と続いた。また、1年前より増加が目立ったのは、「設備の故障」(2020年:30.6%、2021年:35.8%)、「情報セキュリティ上のリスク」(同27.8%、同32.9%)だった。2020年はサイバー犯罪の検挙数が過去最高となるなど、「情報セキュリティ上のリスク」は顕在化しており、データの取り扱いに対する意識の高まりが示唆されている。リスクへの備えでは「従業員の安否確認手段の整備」、「情報システムのバックアップ」が半数超
BCPを「策定している」、「策定中」、「策定を検討している」とした企業に、「事業が中断するリスクに備えて実施または検討している内容」を尋ねると、最も高かったのは「従業員の安否確認手段の整備」で68.5%となり、2017年から5年連続で首位となった。次いで「情報システムのバックアップ」が55.4%だった。また、多くの項目で大企業が中小企業の回答を上回ったが、規模によって取り組む内容にも違いがみられた。BCP策定の効果「従業員の意識向上」が首位。外部からの評価にメリットも
次に、BCPを「策定している」企業に「策定による効果」を尋ねた。すると「従業員のリスクに対する意識が向上した」が55.5%で最も高かった。特に大企業では60.1%と6割を超えており、その効果を実感していることがうかがえる。以下、「事業の優先順位が明確になった」(33.4%)、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」(33%)などが続いた。さらに、「取引先からの信頼が高まった」(23.2%)といった外部からの“見られ方”に関しては、「公共工事の総合評価入札での加点となり、受注機会増加に?がった」(土木工事、茨城県)や「事業継続力強化計画の認証取得による税制優遇を得た」(一般貨物自動車運送、兵庫県)といった、メリットを実感する声もあがった。
BCP未策定の理由は「スキル・ノウハウ」や「人材の確保」など
最後に、BCPを「策定していない」企業に「その理由」を尋ねると、最も多かったのは「策定に必要なスキル・ノウハウがない」で41.9%となり、2017年調査以降5年連続で首位だった。以下、「策定する人材を確保できない」(29.3%)、「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(27.4%)など、例年と同様の項目が上位となった。企業からの自由回答では、「資金調達が難しく、BCPを策定しても、実行が困難」(肉製品製造、山形県)、「今後取り組むべき課題だと思うが、手が回らないのが実情」(木造建築工事、山口県)といった課題を感じている声が多くあがった。
また、中小企業では「必要性を感じない」が23.8%と、大企業の19.7%を上回る結果に。「自社のみ策定しても効果が期待できない」など、策定に難しさを感じていることに加え、BCPの必要性に懐疑的である様子もうかがえる。さらに、費用面に対する懸念も大企業より高水準となった。