「人的資本を重要視する潮流」について、経営層はより強く意識
現在の日本で、企業価値における「人的資本」はどのように捉えられているのだろうか。はじめに、「国内外で、経営戦略において“人的資本”を重要視する潮流があることを知っているか」を尋ねた。全体を見ると、「詳しく知っていた」が16.4%、「少し知っていた」が50%と、合計66.4%が「知っている」と回答した。
属性別にみると、役員・経営者は「知っていた」の合計が73.8%(詳しく知っていた:21.9%、少し知っていた:51.9%)であるのに対し、人事・教育担当者では「知っていた」が合計62.1%(詳しく知っていた:13.3%、少し知っていた:48.8%)となり、役員・経営層の方が10ポイント以上高い結果だった。日本でもすでに「人的資本経営」の考え方は広まっており、特に役員・経営層の中で意識が高いことがうかがえる。
「経営戦略」と「人事戦略」を連動しているのは5割超
次に、「自社では経営戦略と人事戦略が連動しているか」を尋ねた。すると、「連動している」が16.7%、「ある程度連動している」が40.8%で、合計57.5%が連動していると回答。経営戦略と人事戦略の連動は、日本企業でも新たな潮流として浸透しつつあることが示唆された。人的資本の価値向上のために、「従業員満足度調査」や「従業員の学びの支援」を実施
続いて、「人的資本の価値向上のために、自社で検討または実施しているもの」を尋ねた。その結果、「従業員満足度調査の導入」が53.2%、「従業員の自主的な学び(外部セミナー、書籍、資格試験など)を支援する制度」が52.9%と、2項目で半数を超えた。一方で、「CHO/CHRO(人的資本マネジメントの知的と経験を持つ経営陣メンバー)の配置」(11%)と、「HRテクノロジーによる一部署内のデータ管理」(9.2%)はともに1割程度にとどまった。人材価値向上への取り組みは進んでいるものの、「可視化・開示に向けたテクノロジーの活用」や「経営体制の整備」が進んでいる企業は多くないことがうかがえる。
「ISO 30414」で提示の11領域の指標化は、いずれも半数以下にとどまる
また、「人的資本開示の国際規格のひとつである『ISO 30414』で定められている11の領域のうち、自社で指標化を実施(経営指標として計画・実績をレポート)している項目」を尋ねた。すると、「コンプライアンスと倫理(苦情件数や外部に参照された紛争等)」が47.9%と最も多い結果となった。以下、「人件費(総人件費、外部人件費や採用・離職コスト、雇用当たりコスト等)」が44%、「採用、異動、離職(候補者数、人材流動性、離職率等)」が42.5%と続いた。一方、割合が少なかった項目は、「リーダーシップ(リーダーに対する信頼度、スパン・オブ・コントロール等)」の23.3%、「後継者育成計画(後継者の準備率等)」の21.4%だった。
いずれの項目も指標化は半数以下にとどまっていることから、人的資本価値の可視化を行うためには、まず指標化・数値化を行う必要があるといえるだろう。