シナリオ分析や自社のイノベーションへの取り組みなどを支援
2015年12月、「第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)」にて採択されたパリ協定では、世界共通の長期目標として「産業革命前からの平均気温の上昇を2℃以下に保ち、可能な限り1.5℃に抑える努力をする」旨が盛り込まれた。また日本政府も、2020年10月に菅義偉首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、脱炭素に向けた動きが加速している。環境省では、企業別に中長期の温室効果ガス排出削減目標を設定することや、サプライチェーン全体の排出量を算定・削減することを推進してきた。企業を主体とした排出削減において、重要となるのは「企業が排出量の削減目標数値を一義的に設定すること」だけでなく、各企業が自社にとっての気候変動リスクと機会を特定し、それに対して「経営や事業活動に温室効果ガス削減に向けた具体的対策を盛り込むこと」だ。このため、環境省では2018~2020年度において、TCFDの提言を踏まえ、気候変動に対応した経営を指向する企業より24社を選出し、具体的な気候関連のリスクと機会の特定やシナリオ分析の支援を、モデル的に実施した。また、シナリオ分析の結果として、「実践ガイド」の公開・改定もしてきた。
今回、DTCは環境省の受託事業として、同提言に沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援について、2021年度の対象企業を募集する。対象となるのは、「気候変動に関する1.5℃シナリオ分析に着手していない、気候変動に対応した経営を指向する企業」で、支援面談や社内協働勉強会が実施できる7社程度だ。企業の気候変動の取り組みを推進するため、多様な業種への支援実施を通してシナリオ分析の高度化を図るとともに、支援結果・シナリオ分析の方法論をとりまとめた実践ガイドを改定する予定だという。また、「2050年カーボンニュートラル」等の世の中の動きを踏まえ、1.5℃シナリオを含む現実に即した分析と、分析結果に紐づく脱炭素に向けた自社の革新的技術開発等のイノベーションやトランジションのパス、さらに対応策の検討を支援していく。これにより、気候リスク・機会の特定を支援するとともに、具体的な気候変動対策に資するソリューションを支援することで、SDGsなどに掲げられる社会課題の解決にもつなげていきたいという。なお、募集期間は2021年6月17日~7月13日となっている。
世界各国で社会課題のために動き始めているいま、その取り組みを検討している企業もあるだろう。このような機会を活用するなどして、「自社にできること」を考えてみてはいかがだろうか。