つまり、部下を叱るのが難しいと感じられる管理職が増えてきたようである。
確かに部下を叱るのはとても難しいことである。人材育成やマネージメントの永遠の課題であるという人もいるくらいである。特に部下指導で難しいのが、管理職自身がイラッとして怒っているときである。
イラッと怒っている時に部下に指導すると、かなりの確率でパワハラだといわれかねない可能性があるのである。昔では考えられないことなのかもしれないが、現代はそういう時代なのである。だまっていうことを聞いていたらよいというのは通じない時代になってきているのである。
自分自身が怒りを感じた時、パワハラだといわれずにうまく叱るためにはどうしたらよいか?
一つのポイントとして、イラッとしたときに一度席を離れてトイレの個室等刺激の少ない空間に入るというものがある。これは、行動心理学的にはタイムアウトという技法で、今おかれている環境からいったん自分を切り離すことになる。つまり今現在自身が置かれている状況(刺激)からいったん自分を切り離すことで、気分を落ち着けるという技法なのである。これは臨床心理学特に行動科学の場面でも有用とされており、効果の高い技法である。怒りにかまけて指導してしまうと、どうしても余計なことを言いがちである。そうではなく、一旦自分自身をクールダウンし、その後冷静に指導することが、ハラスメントと言われない指導のコツになるのである。さらにこのポイントは、ハラスメントと言われないだけではなく、冷静に一度検討してから指導するため指導効果も高くなるというメリットもあるのである。
もう一つのパワハラと言われないポイントは?
もう一つのパワハラと言われないポイントとして、「個人攻撃の罠にはまらない」というのがあります。個人攻撃の罠とは、何か問題があった時に「○○さんだからこうなった」という風に個人に原因を帰属させがちな人間の傾向である。行動科学ではこの個人攻撃の罠に嵌っているときは、解決策が出辛いことを実証している。
例えば、
・○○部長が悪い → 業績も上げている。変えられない。解決できない。
・○○さんが弱いから → 今度は強い人を採ろう(現実的には困難)
と、解決策にはたどり着きません。
一方で個人攻撃の罠ではないアプローチであると、
・○○部長の指示の仕方が曖昧である → 部長に指示方法の研修を受けてもらおう
・○○さんは一人で悩みを抱えがちである → 相談窓口や気軽に相談できるようにアドバイスが必要である。
と、解決策に結びつくことが多いのである。
指導の際にもこの個人攻撃の罠に陥っていないかを、先のポイントであるタイムアウトの技法を利用し、気分を落ち着けた後に検証してから指導することがとても有用である。
あなたは○○だからではなく、あなたの○○(スキル)が○○だからと伝えられると、伝えられたほうもなにか自分を否定された、パワハラだと感じることは少なく、建設的な意見の交換ができるようになるものである。
イラッとしたときにこそ冷静になれるタイムアウトの技法と、個人攻撃の罠に嵌らない、この2点がパワハラと言われない2つのポイントである。今日から早速試してみてほしい。
どうしても個人では上記が実施できないと不安に感じられた場合は、臨床心理士やカウンセラーと言った専門家に相談してほしい。
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田健太