デロイト トーマツグループは2020年2月、「一般社団法人at Will Work」と共同で実施した「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表した。調査対象は国内企業277社。この調査は2013年から継続的に実施している『働き方改革の実態調査』の第4回目となる。調査結果から、働き方改革へ取り組み状況やどれほどの効果を実感しているかなどが明らかになった。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

約9割が働き方改革に取り組む一方、効果を実感している企業は約5割

この調査では、働き方改革を「長時間労働の是正にとどまらず、生産性と従業員の働きがいの向上を実現すること」と定義。その上で、企業の取り組み状況や組織風土を調査分析し、課題解決に導くことを目的としている。

まず、「働き方改革への取り組み状況」について聞いたところ、「働き方改革を実施した」または「推進中」と回答した企業は約9割だった。調査開始時の2013年、および前回調査した2017年の結果を比較すると大幅に増加しており、ほとんどの企業が働き方改革に着手していることがわかる。そのうち、既に「働き方改革を実施済み」との回答が20%と、2017年の10%から倍増している状況だ。

一方、働き方改革の目的に対して「効果を実感した」と答えた割合は、半数程度にとどまる結果となった。取り組み状況と比較して効果の実感度合いが低いことから、企業の働き方改革は、まだ道半ばだと感じる。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

働き方改革の目的は「従業員の定着」と「新規採用の強化」

次に「働き方改革を実施する目的」について聞いたところ、「従業員満足度の向上・リテンション」が88%で最多だった。前回調査と比べ10%以上増えていることが特徴的だ。次いで「多様な人材の維持獲得、D&I促進」が67%、「採用競争力強化」、「コンプライアンス対応」がそれぞれ50%という結果になった。多くの企業は人材不足に直面している。そのため、「従業員の定着」、「採用強化」を実現するために、人材に重点を置いた働き方改革を推進していることがわかった。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

9割以上の企業が、「長時間労働の是正」に向けた施策を検討中

続いて「企業が実際に検討している施策」の上位5位を見ると、最も多かったのが「長時間労働の是正」で95%となり、大半の企業が検討している状況が見て取れる。「働き方改革関連法」の施行により、対策実施が急務となっているようだ。次いで「業務プロセス・ルールの見直し」が59%となり、生産性向上に向けた既存業務の効率化に取り組む企業も増えている。また、多様な働き方の推進につながる「オフィス外勤務の促進」、「組織風土改革」、「オフィス環境の整備」などの施策も上位となった。

また、上位5位には入らなかったものの、「副業・兼業の推奨」という回答が昨年から12%も増加し14%になったことから、エンプロイーエクスペリエンスを重視した施策が注目されていることが垣間見えた。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

効果の実感割合が最も高いのは「コンプライアンス対応」で8割

次に「働き方改革における効果」について項目別に見ていくと、働き方改革としておこなっている施策全体の効果を実感している企業は約半数に上ったものの、働き方改革の目的によって効果の実感割合に差が出ていることがわかった。

残業時間に制限を設けることを目的とした「コンプライアンス対応」は80%で最多となり、多くの企業が高い効果を実感している。次いで「従業員満足度の向上・リテンション」が61%、「多様な人材の維持獲得、D&I促進」が54%、「採用競争力強化」が48%と続き、働き方改革で重視されている割合が高い一方で、効果が実感されていない項目もあることが分かった。その他の項目では、働き方改革の目的として定めている企業はごく少数であるものの、「デジタルトランスフォーメーション推進」や「セキュリティリスク低減」など、テクノロジー活用に関わる項目でも効果実感の割合が高かった。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

働き方改革の本格的な推進が求められる

今回の調査結果から「働き方改革の必要性を理解し、施策に取り組む企業が多いこと」、「行っている施策の内容とそれに対しての効果の実感割合にはバラつきがある」という2つの状況が明らかになった。

この状況をデロイト トーマツが定義する「働き方改革の3ステップ」に照合していくと、多くの企業が「コンプライアンスの徹底」を終えた段階にあり、一部の企業が「既存業務の効率化」を推進中の状況といえる。しかし、本質的な働き方改革の実現には、多様な働き方の実現により確保できた「時間」や「柔軟性の高い考え方」が必要だ。これを従業員の自己啓発と成長に繋げ、企業が事業の発展を目指す「イノベーションを創出していくこと」重要だといえるだろう。現状の働き方改革を次なるステップへと進めることが、企業には求められそうだ。
働き方改革の効果を実感する企業は約半数。「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表

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