株式会社ワークポートは2020年2月、全国の転職希望者307人を対象に行った「リカレント教育に関する調査結果」を発表した。言葉の認知度や、働く人と企業双方の「学び直し」への取り組み具合など、「リカレント教育」への意識が明らかになった。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

「リカレント教育」を知っている人は約2割。若年層ほど認知度は低い傾向

人生100年時代といわれる昨今。政府は、年齢問わず職場復帰や転職が可能となるよう、「リカレント教育」を拡充していく方針を示している。そうした状況を背景に、ワークポートが全国の転職希望者に対するリカレント教育への意識調査を行い、働き手自身がリカレント教育や学びなおしを必要と考えているかどうかを探った。

まず、「リカレント教育」という言葉を知っているかを聞いたところ、「知っている」という回答が20.8%、「聞いたことはある」が25.7%、「知らない」は53.4%となった。言葉自体やその意味を認知している人は半数以下という結果にとどまっており、まだそれほど浸透していないことがうかがえる。

また、「知らない」と回答した人の年齢層を見ていくと、20代が62.8%、30代が56.4%、40代が42.3%という結果となった。年齢によって認知度に差が見られ、特に若年層ほどリカレント教育を認知していない傾向にあることがわかった。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

約6割がリカレント教育に意欲的。今後予定している人も多数

次に、「学び直しをしているか」という問いに対しては、している人が40.7%、「今後学び直す予定がある」と回答した人が16.3%となった。一方「ない」と回答した人は43%という結果となった。学び直しに意欲的な人は合計で57%となり、約6割にのぼることがわかった。

なお、学び直しの方法ついては「本を購入する」、「学生時代に使っていたテキストを読み返す」などの回答が目立った。さらに、「MBAを取得すべく経営大学院に通っている」や「ネット配信講座の受講をしている」といった、大学や民間企業が主催するリカレント教育の場の利用者も一定数いることもわかった。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

「学び直しをしたい」と思う人は約7割

「学び直しをしたことない」と回答した人には、今後学びなおしをしてみたいかを聞いたところ、「とても思う」が32.6%、「やや思う」が44.7%となった。現在は学び直しをしていなくても、意欲的な人は7割を超えることがわかった。一方、「あまり思わない」「まったく思わない」の合計は22.8%にとどまった。

「とても思う」、「やや思う」と回答した人にその理由を聞いたところ、「新しく学ぶことで自分の市場価値を高め、選択肢を増やせるから」、「常に学び続けて成長したいから」、「終身雇用の崩壊が叫ばれる中、勉強を続けないと社会で生き残れないと感じるから」などの回答があった。時代や社会、制度の変化に対応するため、個人のスキルが重要視されるようになってきていることを受け、働き手が危機感を持っていることがうかがえる。その他、「知識を増やして仕事に活かしたい」「自身に足りないこところを学び直しによって補いたい」といった意見も散見された。

一方、「あまり思わない」と「まったく思わない」と回答した人に理由を聞いたところ、学び直しの必要性は認識しているものの、「現場の方が身に付けられることが多い」や「企業によって使用しているシステムや考え方が違うため、実務を通して教育するべき」といった意見が目立った。また、「何を学び直したら良いかわからない」という課題を抱える人がいることもわかった。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

「英語」と「プログラミング」、「経営学・経済学」に人気が集中。課題は時間と金銭面

「学び直しをしたい」人に、どのような学び直しをしたいかを聞いたところ、「英語・英会話」が最も多く、次いで「プログラミング」、「経営学・経済学」という結果だった。「現在学び直しをしている」人の勉強内容と同じであることから、学び直しに対する働き手の関心が特定の分野に集中していることがうかがえる。「ビジネスのグローバル化」や「IT市場の拡大」が進む中、自身の市場価値を高めるために必要な分野の学び直しをしたいと考えている働き手が多いといえるだろう。

一方、学び直しに関する懸念について尋ねたところ、「時間の確保ができない」、「金銭面の負担が大きい」という声があがった。リカレント教育や学び直しに興味はあるものの、時間と金銭の捻出がハードルとなっているのが実情のようだ。

9割以上が「学び直しの機会」がある企業に魅力を感じる

次に、学び直しやスキルアップへの取り組みを行う企業に魅力を感じるかを聞いたところ、「とても感じる」と「やや感じる」を合わせて93.5%にのぼることがわかった。一方、「あまり感じない」、「まったく感じない」とする回答は合計でも6.6%にとどまった。多くの人がリカレント教育に取り組んでいる企業に対して良い印象を持っていることがわかる。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

勤務先に「学び直しの機会がある」と答えた人は約2割にとどまる

一方、現在勤務している会社(もしくは直近で勤めていた会社)に、既存社員に向けた学び直しの機会や新しいスキルを習得するための取り組みがあるかを聞いたところ、「ある」が24.8%、「ない」が60.3%、「わからない」が15%となった。合計すると75.3%となり、回答者の多くが社内で学び直しをする機会が少ないと感じている様子だ。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査

約9割が「リカレント教育の重要性が高まる」と回答

続いて、今後リカレント教育の重要性は高まると思うかを聞いたところ、「とても思う」という回答が59.3%、「やや思う」が30.3%で、合計89.6%となった。一方、「あまり思わない」(8.8%)、「まったく思わない」(1.6%)は約1割にとどまる結果となった。
約6割が「学び直し」に意欲的。リカレント教育に対する意識調査
最後に、「何歳からでも学び直しが可能な社会になってほしいと思うか」という質問には、「とても思う」(80.5%)、「やや思う」(15.3%)と、合計95.8%がポジティブな回答となった。多様化する働き方に対応すべく、今より知識を向上していくための「リカレント教育」に重要性を感じている人が多い結果といえるだろう。

働き方の多様化や社会の変化が影響し、個人スキルの向上が重要視される時代に突入している。優秀な人材を定着させていくために、企業は労働者のニーズを汲み取り、リカレント教育やスキル向上を図る施策を考えてみてはどうだろうか。

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