【採用戦略の立案】配属部門の当事者が関わることで約6割が採用に成功
中途採用は一般的に、「採用戦略の立案」、「採用予算の管理・運用」、「募集要項の考案・作成」、「採用手法の選定」、「応募者の選考(書類選考・面接・合否確定)」、「内定出し」、「内定者のフォロー」のプロセスで実施される。採用者が配属される部門の当事者は、こうしたプロセスにどの程度関わっているのだろうか。はじめにリクルートは、中途採用における「採用戦略の立案」に誰が関わっているかを尋ね、「人材を求めている部門(責任者または担当者)の採用関与の有無と“採用成功”の関係性」を分析した。すると、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業で57.3%、関わっていない企業で42.9%だった。人材の配属部門の当事者が採用に関わっている企業のほうが、採用成功率が14.4ポイント高かった。
これを受け同社は、「実際の配属部門の当事者が、採用プロセスの最上流である戦略立案から採用に関わることで、現在の事業から見て足りていないことは何か、それを解決していく人材に必要なスキル面や人物面の詳細な検討といった人材要件定義が早い段階で可能となる」とした上で、「その結果が書類選考基準や面接内容に反映されることで、採用成功につながっていると考えられる」とコメントしている。
【応募者の選考】配属部門の当事者が関わる企業は成功率が6.5ポイント上昇
続いて同社は、「応募者の選考(書類選考・面接・合否確定)」について、「人材を求めている部門(責任者または担当者)の採用関与の有無と“採用成功”の関係性」を調査した。その結果、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業は51.1%、関わっていない企業は44.6%と、当事者が採用に関わっている企業のほうが6.5ポイント高かった。この結果から同社は、「実際の配属部門の当事者が応募者の選考に関わることで、現場が求める人材と中途採用者のミスマッチを減らすことができる。一方、求職者は実際に一緒に働く人との対話を通じて、仕事内容や期待される役割、その現場の雰囲気、人柄などがわかることで、実際に働くリアルなイメージが湧くといったメリットがあると考えられる」との見解を示している。
【内定者フォロー】配属部門の当事者の関わりによる有意差は、他のプロセスと比べると小さい
続いて同社は、「内定者のフォロー」について、「人材を求めている部門(責任者または担当者)の採用関与の有無と“採用成功”の関係性」を分析した。すると、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業では48.4%、関わっていない企業では46%と、当事者が採用に関わっている企業のほうが2.4ポイント高かったものの、他の採用プロセスと比べると顕著な差は見られなかった。【内定者フォロー】役員・人事部の責任者が関わることで採用成功率が上昇か
そこで同社が、「内定者のフォロー」について「役員または人事部の責任者が採用に関わっているか否か」で分析したところ、「採用が上手くいっている」との回答は、役員または人事部の責任者が採用に関わっている企業(55.7%)と関わっていない企業(41.4%)では、14.3ポイントの差が見られた。これを受け同社では、「内定者フォローのプロセスでは、求職者にとって本当にその企業で働いていくかについて、検討のリアリティが一段と増す。このプロセスにおいて、転職後の具体的な仕事内容、中長期観点でその企業が大きくどのような方向性・戦略を目指しているか、その中で自分はどのようなキャリアパスが望めるかなどについて、期待や不安を感じる人が多いのではないか」とした。その上で、「このような場面では、企業の戦略を司る経営陣や多くの社員のキャリアを知る人事責任者が、しっかりとその人の質問や不安を解消することが重要であり、そのような働きかけの有無が採用成否の結果に表れているのではないか」と推測している。
中途採用のプロセスにおいて“人事部以外の関わりの少なさ”が顕著に
最後に、同社は「中途採用に関わっている人の割合」をプロセス別に集計した。それぞれの関係者がどのプロセスに最も関わっているのかを見ると、役員・経営者は「応募者の選考」で28.9%、人事部の責任者は「応募者の選考」で47.7%、人事部の担当者は「内定者のフォロー」で48.5%、部門の責任者は「応募者の選考」で28.3%、部門の担当者は「内定者のフォロー」で20.8%だった。いずれの採用プロセスにおいても、人事部以外が3割未満と、関わりが少ない実態が明らかとなった。また、「採用が上手くいっている」と回答した企業に対して、「新しく取り組んだ施策や工夫点」を自由回答で尋ねたところ、「応募者からの細やかな要望の聞き取り」、「キャリアパスの明確な提示」、「応募者のニーズにフレキシブルに対応」といった、求職者に寄り添う姿勢が見られたという。