「こどもを産みたいと思わない、産む予定はない」とする女性は6割にのぼる
日本の長期課題である「少子化問題」に対して、2023年3月に岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げた。出生率を上げるべく国内ではさまざまな議論がなされているが、働く女性が安心してこどもを産むために、企業はどのような環境を整備する必要があるのだろうか。識学はまず、「現在こどもがいない人」を対象に、「こどもを産みたい、もしくはこどもを産む予定があるか」を尋ねた。その結果、「こどもを産みたいとは思わない、産む予定はない」が最多の44%、「こどもを産みたいと思っているが、産む予定はない」が20%で、「こどもを産む予定はない」とした人の合計は64%だった。一方で、「こどもを産む予定がある」人は5.3%にとどまった。
こどもを産みたいと思わない理由は「こどもが欲しいとは思わない」が1位に
続いて同社が、「こどもを産みたいと思わない・産む予定がない人」を対象に、「その理由」を尋ねたところ、「こどもが欲しいとは思わないため」が34.4%でトップだった。以下、「自由がなくなるため」が32.3%、「こどもを産む・育てる自信がないため」と「自分自身のために時間を使いたいため」が同率で30.2%、「経済的な余裕がないため」が28.1%、「パートナーがいないため」が27.1%と続いた。こどもを産みたいと思わない理由は、経済状況ではなくライフスタイルの変化への恐れにあると推測できる。出産・妊娠した場合の心配事のトップは「教育費等を含めた経済面」
次に、「現在こどもがいない人」に対し、「こどもの出産・妊娠について心配だと思うこと」を質問した。すると、「教育費等を含めた経済面」が47.3%で最多だった。続いて、「育児と仕事の両立」が43.3%、「自分自身の精神・体力がもつか」が41.3%、「育児の責任の重さ」が38%で上位に挙がった。前設問の「こどもを産みたいと思わない・産む予定がない理由」において経済的な理由は上位に挙がらなかったが、出産・妊娠を実際に想像した場合、経済面を心配する人が多いことが見て取れる。出産・育児で必要な制度の上位は「時短勤務」、「育児・出産手当」
続いて、全体に対し「こどもの出産・育児において、必要だと思う勤務先の制度・体制」を聞いた。すると、最多回答は「時短勤務」(59%)で、以下、「育児手当」(56.3%)、「出産手当」(54.3%)、「こどもの都合によって勤務ができる会社の雰囲気」(51.7%)、「リモートワーク」(47%)と続いた。制度や子育てしやすい社内の雰囲気のほか、手当を求めている人も多いようだ。出産・子育て環境が「整備されている」との回答は4割未満にとどまる
続いて同社が、「勤務先では、こどもを出産しやすい・育てやすい環境が整っていると思うか」を聞いたところ、「そう思う(“ややそう思う”を含む)」と回答した人は全体の36%だった。こどもがいる人・いない人別でみると、こどもがいる人は「そう思う」が43.3%であるのに対し、こどもがいない人は28.6%と、結果に大きな差が生じた。同社はこれを受け、「こどもがいない人にも目に見えてわかる『会社の子育て環境の整備』が必要なのではないか」との見解を示している。
また、「勤務先が出産・子育てしやすい環境だと思う理由」の自由回答には、「時短制度や育児休業がきちんととれる」、「時短勤務や早めの産休取得など、福利厚生が充実している」といった声が寄せられたという。
一方で、「勤務先が出産・子育てしやすい環境だと思わない理由」としては、「特に何の補助や施策も取られていないから」や「出産を経て、職場復帰した女性がいないから」との声があがったとのことだ。
6割超の女性が「育休取得しやすい環境」と答えるも、制度や環境には不満の声
最後に同社が、「勤務先は、育児休業が取得しやすい環境か」と尋ねたところ、「取得しやすい」が63.7%、「取得しにくい」が36.3%だった。「育休取得しやすい理由」を自由回答で聞いたところ、「申請すれば通るが、正社員でないと難しい」や「取得は可能だが、元の部署に戻れる保証は一切なし」などの声が寄せられたという。「育休取得しやすい」と回答した人の中にも、不満があることがうかがえる。
対して、「育休取得しにくい理由」には、「しっかり育休を取得できるルールがなく、知らされていない」や「理解者が少ない。既婚でも既にこどもが成人済み、もしくは育児にかかわってこなかった上司の圧力がある」などの意見が挙がったとのことだ。