厚生労働省は、職場における熱中症予防対策の徹底を目的として、2023年5月~9月までの期間で「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施している。本キャンペーンでは、労働災害防止団体などと連携のうえ、熱中症に関する資料の配布や、オンライン講習動画等を掲載したポータルサイトを運営。同省は、熱中症予防に関する啓発を行い、職場における熱中症被害の軽減に努める考えだ。
職場の熱中症を防ぐ「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を厚労省が展開。安全管理の呼びかけや応急手当カード配付も

2022年の職場での熱中症発生状況は? 業種別では「建設業」や「製造業」が4割超に

夏季を中心に熱中症の発生が相次ぐ中、職場においても例年、熱中症が多数発生しており、中には死亡に至る事例も後を絶たない。労働中の熱中症発生を防ぐため、各業界・事業場では、速やかな熱中症予防対策が進められている。

2022年の1年間における、職場での熱中症による死傷災害発生状況をみると、死亡を含む休業4日以上の死傷者数が805人、うち死亡者数は28人と、2021年の発生件数をいずれも上回った。
職場における熱中症による死傷者数の推移
業種別では、死傷者数全体の約4割が「建設業」と「製造業」に集中した。死亡者数に絞ると、「建設業」と「警備業」が多く、そのうち多数が「暑さ指数(WBGT)」(※)の把握を行わず、熱中症予防のための労働衛生教育を行っていない状況だった。また、「休ませて様子を見ていたところ容態が急変」や「倒れているところを発見」などの事例から、熱中症発症時に応急処置が適切に行われていない状況も明らかとなっている。

※暑さ指数(WBGT):気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数のこと

「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の概要

このような状況を鑑みて、厚生労働省は労働災害防止団体など各関係機関らと連携して、同キャンペーンを実施している。キャンペーンでは、「職場における熱中症予防基本対策要綱」(2021年4月20日付け基発0420第3号)に基づき、基本的な熱中症予防対策の実施を広く周知するとともに、以下の3点を重点項目として対策の徹底を図る考えだ。

1.「暑さ指数」(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策の実施
2.作業の管理者および労働者に対する、労働衛生教育の実施
3.衛生管理者などを中心として、事業場としての管理体制の整備や、発症時・緊急時の措置の確認と周知 など


対策には、「熱中症予防に係る周知啓発資料等の配布」や「熱中症予防に係る有益な情報等を集めた特設サイトの開設」などが盛り込まれている。下記のポータルサイトでは、中小企業の事業主や安全・衛生管理担当者、現場作業者などを主な対象者とした、熱中症から命を守る基本的な情報を盛り込んだガイドライン「働くひとの今すぐ使える熱中症ガイド」や従業員に配付する「応急⼿当カード(携帯⽤)」のテンプレートがダウンロードできる。

熱中症を疑う症状が見られる場合は、一次対応が生死を分けることもあるため、現場での適切な対応が不可欠だ。この夏も猛暑が続く見込みのため、熱中症発生リスクは高くなるだろう。厚労省のポータルサイトや上記資料などを参考に、熱中症予防対策や労働衛生教育の徹底など、従業員の安全を確保するための措置を検討してみてはいかがだろうか。

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