制度改正により、性別を問わず仕事と育児を両立できる環境に
ポーラが2023年7月より新設した「育児復帰サポート手当」は、育児休業(以下、育休)取得後の職場復帰をする際の支援として、育休を3ヵ月取得した従業員には一括でサポート手当を支給するものだ。かつては、女性従業員の職場復帰に伴う一時的な経済負担を軽減するための制度として実施されていた。しかし、同社では「人生とキャリアを主体的に選び、さまざまな壁に諦めることなく豊かな人生を描くために、子どもをもつ従業員が性差にかかわらず育児に主体的に関わり、両立できる環境整備が必要」と考え、性差なく手当を支給する今回の制度改正に至ったという。また、実際にこれまで育休を取得した男性従業員からの希望の声も、決定を後押ししたとのことだ。
厚生労働省の「育児休業取得率の推移」の資料をみると、2021年度の育児休業取得率は、女性が8割台で推移する一方、男性は13.97%にとどまり、ジェンダーギャップが際立った。これを受け、同社は「ダイバーシティ経営」と「ジェンダー平等」を掲げ、2021年に株式会社ワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同した。これまで、従業員やマネジメント層へのD&I研修、対象者への制度理解促進、相談体制の拡充、評価制度の見直しに取り組み、性差のない育児休業の取得を支援してきたという。
同社における育児休業取得率は、女性では2019年度から2023年度6月時点まで毎年100%を維持している一方で、男性は2019年度では0%だったという。しかし、前述の取り組みの結果、男性の育休取得率は2020年度に20%、2021年度に44%、2022年度に90%と、4年間で徐々に上昇し、2023年度(2023年6月時点)は125%に達したという。
同社は、今後もこれらの取り組みを推進していくことで、「誰もが自分の可能性を諦めず、主体的な選択をし、自分らしく生きることができる社会」を目指していくとのことだ。
「育児・介護休業法」の改正にあたり、育児休業取得率の公表が義務付けられるなど、社会でも男性の育児休業取得を推進する動きが高まっている。一方で、こうした手当の支給や短時間勤務の措置など、育児休業取得後のサポートはいまだ女性のみを対象としているケースも多いだろう。男性の育休取得を推進したい企業では、他社の事例も参考に、自社の支援制度を見直してみてはいかがだろうか。