2022年10月に、岸田政権がリスキリング(学び直し)に対する公的支援を行う方針を打ち出して以降、リスキリングは企業の人事だけでなく、働く人にとっても大きな関心事となっている。今回、株式会社マイナビが2023年3月に発表した「正社員のリスキリング実態調査結果(2023年)」より、働く人の現状認識について確認する。なお、本調査は2023年1月に、20~59歳の正社員を対象に行われ、計800名(各年代200名ずつ)から回答を得たものとなる。
リスキリングで4人に1人は「資格取得」に成功。半数が勤務先に「学習費用の支援」を期待か

約8割が「リスキリングの重要性」を実感

リスキリングに取り組む企業が増えつつある中で、個々のビジネスパーソンは、リスキリングの重要性をどう捉えているのだろうか。

はじめにマイナビは、「今の自分に、『リスキリング』は必要だと思うか」を尋ねた。その結果、全体結果では「とてもそう思う」が21.1%、「ややそう思う」が58.5%となり、合計79.6%がリスキリングの必要性を感じていることがわかった。
今の自分にリスキリングは必要だと思うか

リスキリングには「仕事に役立つこと」や「昇給」を期待

次に同社が、「リスキリングに期待すること」を尋ねると、「仕事・働き方の幅を広げること/幅広く経験を増やすこと」(40.1%)が最も多かった。以下、「学んだ知識をいまの仕事・業務に役立てること」(35.9%)、「昇給」(29.6%)と続いた。
リスキリングに期待すること

リスキリング後は「資格取得ができた」が最多の一方で、ネガティブ要素の回答が続く

続いて同社が、「リスキリングをしたことがあるか」を尋ねた結果は、「現在している」が約2割、「過去にしていた」が約3割だったという。

そこで、「過去にしていたことがある」という回答者に、「リスキリング後の変化」を尋ねた。全体回答では「資格の取得ができた」(26.8%)というポジティブな回答がトップとなった。2位以降は、「時間確保やコストの確保が大変だった」(18.4%)、「身につけたスキルを活かせていない」(16.8%)、「身に付けたが、もう忘れてしまった」(14.5%)と、ネガティブな回答が続いた。

他方で、前設問で「リスキリングに期待すること」として上位にあがっていた項目の「昇給した」は11.2%、「昇進・昇格した」は6.4%にとどまった。リスキリングに対する期待と、実際に得られた効果にはギャップがあることがうかがえる結果だった。
リスキリング後の変化

リスキリングに際し「学習費用負担」や「賃金に還元される仕組み」を望む声が多数に

最後に同社は、「リスキリングを行うにあたり、勤務先にあると魅力に感じる制度」を選択式で尋ねた。その結果、最多となったのは「学習費用を会社が負担してくれる制度」(51.8%)だった。以降、「取得した資格に応じて手当が出るなど、賃金に還元される制度」(49.9%)、「就業時間内にリスキリング(学習)を実施していい制度」(39.4%)が続いた。リスキリングの必要性を感じていても、金銭的・時間的なコストが学びの妨げとなっていることが示唆された。
勤務先にあると魅力に感じる制度
調査結果から、リスキリングの必要性を感じている人は約8割と多いものの、リスキリング経験者は「時間やコストの確保が大変だった」など、ネガティブな要素を感じている人もいることがわかった。リスキリングを行うにあたり、勤務先に金銭的・時間的なサポート制度を望む声が多いことから、学習費の支給や研修機会の設置などが、従業員のリスキリング推進につながるといえるだろう。

この記事にリアクションをお願いします!