“DX”という言葉を「聞いたことがない」が約6割を占める
経済産業省の「DX推進ガイドライン」(現:ガバナンス・コード2.0)をもとに、DX化に取り組み始めた企業もあると考えられるが、調査時点での中小企業におけるDXの取り組みは、どの程度進んでいるのだろうか。はじめにネットオンが「DXという言葉を聞いたことがあるか」を尋ねると、「聞いたことがある」は41.3%だった。一方で、「聞いたことがない」は58.7%と、約6割を占めた。
さらに、「聞いたことがある」とした事業所に「DXの意味を知っているか」を尋ねたところ、「意味を知っている」は約7割を占めた。しかし、「言葉を聞いたことがある」かつ「意味を知っている」とした割合は3割弱にとどまったという。中小企業におけるDXの認知度は低く、今後も課題となっていくことが示唆された。
約7割の事業所が「DXに取り組んでおらず、現時点では取り組む予定もない」と回答
次に同社は、DXの概要を伝えた上で、「自社は人事・採用DXに取り組んでいるか」を尋ねた。その結果、「取り組んでいる」は10.5%とわずかであり、「取り組んでいないが、今後取り組む予定」とした事業所も20.9%と少数だった。一方で、「取り組んでおらず、現時点では取り組む予定もない」は68.6%と7割に迫った。また、「DXに取り組んでいる」とした事業所に「導入ツール」を尋ねたところ、「採用管理(採用サイト作成、応募者管理)」や「Web面接」、「適性検査」、「労務管理(入社手続き、社会保険手続き)」など、さまざまな回答があったという。
各ツールの具体的な効果は「業務効率化」や「業務時間の短縮」が多数
続いて、同社が「DXに取り組んでいる」とした事業所に、「各ツールにおける具体的な導入効果」を尋ねたところ、「業務効率化」や「業務時間の短縮」、「効率化・データ化で業務が楽になった」などの回答が多く見られた。DXに取り組む予定がないとした事業所では「DXに興味あり」が3割弱にとどまる
次に、「DXに取り組んでおらず、今後も予定はない」とした事業所に、「DXの取り組みに興味があるか」を尋ねたところ、「ある」との回答は28.8%にとどまった。事業所全体で「取り組む予定がない」かつ「興味がない」とした事業所が5割に迫ったことから、同社では「中小企業においてDXが停滞している現状を示す結果となった」との見解を示している。
「給与のデジタル払い」の認知度は半数以上に
2023年4月より開始する「給与(賃金)のデジタル払い」の申請を前に、同社は「『給与のデジタル払い』の内容を知っているか」を尋ねた。すると、「知っている」は52.9%と半数を超えた。DXの一環で解禁された同制度の内容を半数以上が「知っている」のに対し、「DXという言葉を聞いたことがある」事業所は5割以下だったことから、同社では「制度化によって労働基準法が改正されるため、導入の有無に関わらず、情報に触れる機会が多かったことが要因なのではないか」との見解を示している。
給与のデジタル払いを「利用したい」は2割に満たず
さらに同社は、「給与のデジタル払い」の概要を伝えた上で、「給与のデジタル払いを利用したいか」を尋ねた。すると、「利用したい」は16.9%にとどまり、「利用したくない」は83.1%と8割以上におよんだ。「その理由」を尋ねると、「利用したい」とした事業所では、「楽そう、簡単だから」や「手数料が少ない、コストの削減」などがあがった。一方で、「利用したくない」とした事業所では、「セキュリティ面が不安」や「現在の支払い方法で支障がない、従業員が望んでいない」などの声が聞かれたという。
DXの課題は「人材不足」や「始め方が分からない」、「方針がない」が上位に
最後に同社は、「DXの取り組みに関する課題」を尋ねた。すると、「DXやITの知識がある人材がいない」(37.6%)が最も多く、以下は、「何から始めてよいか分からない」(36.3%)、「DXに取り組んでいく方針がない」(35.7%)と続いた。結果から、予算や効果に関する課題以上に、DXの進め方や人材確保の面で課題を抱える事業所が多いことがうかがえる。自由回答には、「言葉の定義は理解できても、実態として何がDXになるのかよく分からない」や「内部の仕組みを変えることに対する予算取りが難しい」、「業務が忙しく、新しいことに取り組む余力がない」などの声が寄せられたという。