パイオニア株式会社は2022年11月17日、税理士を対象に実施した「電子帳簿保存法の改正」に関する調査の結果を発表した。調査期間は2022年10月15日~18日で、実務対応を行っている税理士111名から回答を得た。なお、税理士が実務を担当している企業の内訳として、個人事業主と小規模事業者が約7割だったという。本調査により、「改正電子帳簿保存法」に対応できている企業の割合や、データ保存に関するリスク・課題などが明らかとなった。
「改正電子帳簿保存法」に対し“対応が不十分”な企業が多い実態。データ保存に関する課題は「消失」や「長期保存性」などか

「電帳法」の改正に「ほぼ完全に対応できている」企業はごく少数

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上や記帳水準の向上等を目的として、2022年1月に「電子帳簿保存法」が改正された。2024年には電子取引における「電子保存」が義務化されるため、企業はその仕組みを整備する必要があるが、調査時点ではどれくらいの企業が「改正電子帳簿保存法」に対応できているのだろうか。

はじめに、パイオニアが「あなたの担当しているクライアントで、現時点で『電子帳簿保存法の改正』に対応できている企業の割合はどれくらいですか?」と尋ねると、「半分程度」が18.2%で最も多かった。以下、「4割程度」と「3割程度」がともに16.4%、「2割程度」が14.5%で続いた。

「5割以下」の合計が73.6%だったのに加え、「ほぼ完全に対応できている」との回答が2.7%にとどまったことから、多くの企業では未だ準備段階であることがうかがえる。
「電子帳簿保存法の改正」に対応できている企業の割合

最も多い税理士への問合せは「対応した会計・精算システムについて」

続いて、同社が「あなたの担当しているクライアントからの『電子帳簿保存法の改正』に関する問い合わせで多いものは何ですか?」と尋ねると、「対応した会計・精算システムについて」が59.1%で最多だった。以下、「各制度に応じた具体的な対応方法」が50.9%、「電子取引の電子データの保存方法について」が42.7%で続いた。
「電子帳簿保存法の改正」に関する問い合わせ内容

電子データの保存先は「USBメモリー」や「SSD・HDD」など

次に、同社が「あなたの担当しているクライアントでは、電子帳簿のデータの保存先としてどのようなものを採用していますか?一番多いものを教えてください。」と尋ねた。すると、「USBメモリー」が26.9%、「SSD」が18.3%、「HDD」が17.3%で上位となった。
電子データの保存先

データの「誤操作・機器故障による消失」や「長期保存」に懸念も

また、先の設問で回答した「保存先メディア」について、「あなたが課題やリスクだと考えている点を3つまで教えてください」と尋ねた。すると、「データを誤って削除・上書きするなどのリスク」が51%で最多だった。以下、「機器の故障などによるデータ消失」が48.1%、「長期保存性(経年劣化、買い替え、データ移行が必要など)」が39.4%となった。法律上、「7年間のデータ保管」が義務付けられているため、長期保管が可能かどうかという点で懸念をもつ税理士が多いことが考えられる。
データ保存の課題やリスク

半数が、データ保存で重要なことは「セキュリティ」と回答

最後に、「あなたが電子帳簿のデータ保存で重要だと思うことを3つまでお答えください」と同社が尋ねると、「セキュリティ(パスワードの設定など)」が50%で最も多かった。以下、「データ消失リスクが少ないこと」が45.5%、「長期保存できる耐久性」が32.7%で続いた。
データ保存で重要なこと
本調査より、データの「電子保存義務化」まで約1年となった調査時点では、対応が十分に進んでいない企業も多いことがわかった。対応を進める上で自社の課題を洗い出し、調査結果や他社の対応も参考にしながら準備を進めたい。

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