休日とは「労働義務がない日」を言う。よって、当然に休むことができる。会社は、労働義務がない日に働かせれば、その分の支払いが生じる。休暇とは「労働義務がある日」に労働義務を免除するものである。
では、夏季や年末年始の休みを定めるとすると、どちらになるのだろうか。
(休日)
第●条 休日は、次のとおりとする。
(1) 日曜日
(2) 土曜日
(3) 国民の祝日
(4) 夏季休日(8月○日から○日までの○日間)
(5) 年末年始(12月○日から1月○日までの○日間)
(6) その他会社が指定する日
この規定を基にして考えてみよう。
夏季休暇ではなく夏季休日とあるように、ここでは休暇ではなく、休日として、夏季、年末年始の休みを定めている。これらの休日から年間休日日数を確定し、365日(366日)から減じれば、年間所定労働日数を出すことができる。年間所定労働日数×1日の所定労働時間数÷12ヶ月で、時給単価が出る。時給単価に割増率を乗じて割増賃金単価が決定される。割増賃金単価と年間休日日数は、関連していることがわかる。
一般に夏季休暇、年末年始休暇と呼ばれるものを、上記の例のように休日のところに記載していれば、年間の所定労働日数を計算する場合の、休日日数に加算することになる。
例えば、会社が夏季休日に働かせれば、休日に出勤したという扱いになり、同じく休日とした土曜や日曜に出勤した場合と同様の扱いとなる。休日ではなく、特別休暇と位置付けて休暇のところに記載していれば、休日に出勤したという扱いにはならない。年間休日に含めていた場合より休日が減るので、所定労働日数が増えることになる。
モデル就業規則の規定例のような完全週休2日制の会社ではなく、なかなか週休2日の休日が取れない会社の場合、年間休日日数を増やすために、年末年始や夏季休日を休日として定めていることが多い。休暇と混同するような扱い(取得する、しないは本人に決定権がある)をしないように気をつけなければならない。
部下-「忙しいから取得できそうもありません」
上司-「そうか、わかった」
というのは、自社が休日として定めているのであれば、部下に決定権があるように見えるこの運用はおかしい。所定労働日数が増えれば、時給単価が下がり、割増賃金単価も下がる。反対に、休日日数を増やして所定労働日数が減れば、時給単価が上がり、割増賃金単価も上がる。
具体的に数値をいれてみると
1)年間休日が120日の場合
○1日の所定労働時間 8時間
○所定労働日数(365日-120日)245日
○年平均月間所定労働日数 245日÷12か月=20.4日
○平均月間所定労働時間 20.4日×8時間=163.2時間
月給30万円の場合
時間単価は 30万円÷163.2時間=1,838円
2)年間休日が105日の場合
○1日の所定労働時間 8時間
○所定労働日数は(365日-105日)260日
○年平均月間所定労働日数 260日÷12か月=21.6日
○平均月間所定労働時間 21.6日×8時間=172.8時間
月給30万円の場合
時間単価は 30万円÷172.8時間=1,736円
年間休日日数が15日減る(=所定労働日数が増える)ことで、同じ賃金でも時間単価に102円の差がついた。割増賃金も同様に差がつく。年間休日日数をどう定めるかということは、所定労働時間数を決定するだけでなく、人件費を決定することでもあると言える。単純に人件費を考えれば、休日日数を増やすよりは、休暇を増やす方が得策である。休暇をどれだけ増やしても、時間単価には影響がない。
休日なのか、休暇なのか、まずは、就業規則で明確に定めているかどうかを、自社の就業規則で確認しておこう。現在、休日扱いにしているものを、休暇に変更する場合は、休日日数が減り、労働者から見れば不利益変更でもある。変更するには、労働者への事前説明、同意、代替措置も考慮しておきたいものである。
鈴木社会保険労務士事務所 鈴木 早苗