株式会社タナベ経営は2021年5月26日、「基幹系システムの導入・活用に関する企業アンケート」の結果を発表した。調査期間は2021年1月20日~2月12日で、全国の企業経営者・経営幹部・管理部門を中心とする10,184名から回答を得た。これにより、企業での基幹系システムの導入状況や、それに伴う課題が明らかとなった。
6割以上の企業で「基幹系システム未導入」の実態が明らかに。DXに向けた活用状況や課題とは

約6割の企業が基幹系システムを導入していないことが判明

基幹系システムとは、企業の業務内容と直接関わるシステムのことで、「生産・販売・在庫管理システム」、「人事給与システム」、「財務会計システム」などが該当する。管理部門の業務効率化を図るため、基幹系システム導入への注目が集まるなか、企業はどのような意識を持っているのだろうか。

まず、「基幹系システムの導入状況」について尋ねた。すると、37.9%が「自社にシステムを導入していない(アウトソーシング先での対応を含む)」と回答した。次いで25.1%が「Excel等Office系アプリケーションで対応している」と回答しており、合わせて63%の企業では、基幹系システムの導入そのものがなされていないことがわかった。
基幹系システムの導入状況

既存システムで「会計プロセス」まで補完できていない企業が多数

続いて、「基幹系システムの導入範囲」について尋ねた。その結果、「人事・給与計算システム」とした企業が最多で43.6%となった。次いで多かったのが「販売管理システム」で35.6%だった。「単体会計システム」は22.5%にとどまり、多くの企業において、既存の基幹系システムでは会計プロセスまでカバーできていない実態が判明した。さらに「SFA・CRMシステム」を導入している企業は12.7%という結果から、販売管理は一定のカバーがなされているものの、顧客情報を全社情報とリンクさせている企業は少数にとどまっていることがわかった。
現行基幹系システムの導入範囲

3割弱の企業が既存の基幹系システムを11年前以上に導入したことが判明

また、「基幹系システムを導入している」と答えた企業に対し、「既存の基幹系システムの導入時期」について尋ねた。すると「16年以上前」が13.9%、「11~15年前」が12%と、全体の25.9%は導入時期を11年以上前と回答しており、システムの拡張性や保守性が懸念される結果となった。

一方で、「1年未満」が7.6%、「1~5年前」が27.2%と、合わせて34.8%は経済産業省が提唱する「2025年の壁」を見越したシステムの入れ替えを実施したと見られ、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進への取り組みが2極化していることがうかがえる。
既存の基幹系システムの導入時期

約3割が「業績管理を含むデータの有効活用に課題がある」と回答

次に、「基幹系システムの活用状況および課題」について尋ねた。その結果、「業務の生産性向上や効率化が進み、業績管理を含むデータの有効活用ができている」は27.7%にとどまった。対して「業務の生産性向上や効率化は進んでいるが、業績管理を含むデータの有効活用に課題がある」は34.4%で最多となった。

さらに、「部分最適となっており、全社的な統合基幹システムとなっていない」(14.6%)、「複数システム間のデータ連携が未実現のため、データ加工作業等が多数発生している」(9.2%)といった課題も浮き彫りになった。企業として、データ管理手法の整理と再構築や、全社的なシステムの連動性を確保した全体像の設計が求められる。
現在の基幹系システムの活用状況および課題

基幹系システム更新では「投資回収効果」と「専門人材の不足」が課題に

さらに、「基幹系システムの更新における障壁」について尋ねると、「自社にとって適正なコスト・投資金額・投資効果が算定できない」が25.5%と最も多い結果となった。その原因として、基幹系システムは多額の投資が必要になる反面、使用期間が長期にわたるため、投資回収効率の判断が難しいことが考えられる。また、「既存システムを理解しているIT人材/自社の情報システム部門の人材等が不足している」(11.6%)、「新システムの企画・設計・開発人材の不足」(11.8%)といったことも、システム更新の課題となっていることがわかった。「企業が目指すビジネスモデル」と「システムの重要性」を軸として、投資判断を行う必要があるだろう。

多くの企業では既存の業務プロセスを見直し、生産性の高い事業構造を目指している

最後に、「今後行っていきたいDX」について尋ねたところ、「業務プロセスの効率化」が22.1%で最多となった。次いで「業務プロセスの質・精度の向上」が14.8%だった。多くの企業が既存の業務プロセスそのものを見直し、生産性の高い事業構造の設計を目指していることがうかがえる。

また、11.4%が「ビジネスモデルの変革(サブスクモデル・EC等)」と答えたことから、収益構造そのものの変革や顧客接点の見直しについて、デジタル技術による実現を図りたいという意思があるようだ。
今後行っていきたいDX
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では「2025年の崖」が提唱されるなど、多くの基幹系システムのサポートが終了する2025年以降、国内で大規模な経済的損失が発生することが危惧されている。そういった課題を見据えたうえで自社のシステムを見直して、新たなビジネススタイルに対応するDXのプランが必要になるだろう。

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