パーソルキャリア株式会社は2021年3月29日、職種別の残業時間の実態調査の結果を発表した。調査は2020年8月に実施され、20歳~59歳の正社員として働くビジネスパーソン15,000人から回答を得た。これにより、職種別の残業時間の実態や、コロナ禍による影響などが明らかとなった。
緊急事態宣言下で働く人々の残業時間はどう変化したのか。職種別の“平均残業時間”を調査

新型コロナウイルス感染症の影響で、残業時間は平均「7.5時間減少」の20.6時間に

コロナ禍により人々の働き方が大きく変わるなか、残業時間はどのように変化しているのだろうか。はじめに、新型コロナウイルス感染症拡大による1回目の「緊急事態宣言」が発出された、2020年4~6月における残業時間を尋ねた。その結果、15,000人の1ヵ月あたりの残業時間を平均すると「20.6時間」に。緊急事態宣言前の同年1~3月の平均である「28.1時間」と比べ、7.5時間短縮したことがわかった。
1回目の「緊急事態宣言」前後の平均残業時間

残業時間が最も減った「職種」と「全般的な傾向」はどうだったか?

職種別の残業時間の変動を見ると、コロナ禍で残業時間が最も減少したのは「基礎研究」(-18.3時間)、次いで「コンサルタント」(-17.4時間)、「技術営業」(-17時間)などとなった。

その他、特に営業系の職種でも残業時間が大幅に減った模様だ。営業系全16職種の残業時間は2020年1~3月期と比べ、月平均で「-8.9時間」となり、全体平均の「-7.5時間」よりも減っていることがわかる。取引先や見込み顧客への訪問営業や対面営業の縮小が、残業時間の大幅減につながったと推察される。
1回目の「緊急事態宣言」前後の平均残業時間(残業が少ない職種)

残業が少ない職種には「事務/アシスタント系」が多くランクイン

次に、2020年4~6月期に「残業時間が少ない職種」をランキング形式で確認すると、第1位は「営業事務アシスタント」で9.2時間に。2位は「医療事務アシスタント」で10.7時間となった。また、5位に「一般事務アシスタント」(12.7時間)、6位に「経理/財務事務アシスタント」(13.2時間)がランクインするなど、残業が少ない職種の上位20職種のうち、半分を「事務/アシスタント系」が占めていることが判明。同様の傾向がコロナ禍以前の1~3月でも見られることから、事務/アシスタント系の職種は安定的に残業時間が少ないことがわかる。

なお、残業時間が少ない職種TOP20の2020年4~6月の平均残業時間は14.1時間となり、同年1~3月の20.7時間から6.6時間減少した。コロナ禍で、多くの職種の残業時間が減少している様子がうかがえる。
1回目の「緊急事態宣言」前後の平均残業時間(残業が多い職種)

一般的に「残業が多い」と言われる職種も、コロナ禍では減少傾向

一方、2020年4~6月期に「残業時間が多かった職種」をランキング形式で確認すると、TOP20の1ヵ月あたりの平均残業時間は「27.5時間」となった。同年1~3月の平均「37.2時間」から「-9.7時間」と、大幅に減少したことがわかる。

残業時間の多い職種の上位には、「エンジニア」系、「営業」系、「クリエイティブ」系が並ぶが、いずれも2020年1~3月期比で減少しており、コロナ禍による影響を大きく受けていることがわかる。残業時間が多い職種の1位は、「教育/スクール」で38.6時間、2位は建築/土木系エンジニアの「施工管理」で36.9時間、3位は営業系の「人材サービスの営業」で30.8時間などとなった。
「職種別の残業時間の実態調査」の図表4
コロナ禍により、さまざまな業界の職種別の残業時間が開示されたことにより、一部では「働きすぎ」の実態も炙り出された。働き方が多様化するいま、いろいろな観点で適切な業務量を考えていく必要があるのかもしれない。

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