ジョブディスクリプションを「すでに導入」している企業は約1割
経団連による提言や働き方改革の推進により「ジョブ型雇用」に注目が集まるなか、企業はどのような意識を持っているのだろうか。ワークスHIでは、ジョブ型を「職務や職責を定義して、基準を設ける制度」と仮定し、調査を実施した。まず、職務内容を詳細に記載する「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の導入状況を尋ねた。すると、「既に導入している」の回答は12.6%となった。導入理由としては、「同一労働同一賃金の実現に向け、有期雇用社員に対して導入」や、「中途採用時に、特定の業務の補充するため」などがあがった。
4割以上が「役割等級制度」を導入。検討中を含めると約7割
続いて、「役割等級制度」の導入状況を尋ねた。その結果、「既に導入」とした企業は44.5%に。そのうち約半数が、役割等級制度の適用範囲を「全社員」と回答しており、以下「一定の役職」、「特定の職種」と続いた。自由回答で導入理由を尋ねると、「専門性の高い能力発揮を評価するため」、「評価の納得性向上」、「役割・職務と処遇の一致」といった評価に関するものや、「脱年功序列のために、職能資格制度から変更」などの声があがった。
7割以上がジョブディスクリプションや役割等級制度により、職務や職責を定義する方針
「ジョブディスクリプション(職務記述書)」または「役割等級制度」を既に導入しているかを質問したところ、「すでに導入している」と回答した企業は47.9%と、およそ半数に迫ることが判明した。「導入・検討予定」(28.6%)も合わせると、全体の76.5%が職務や役割を定義する人事制度への移行を希望していることが明らかとなった。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、ジョブ型雇用導入に「積極的になった」企業も
また、「ジョブ型雇用に関する新型コロナウイルスの影響」を尋ねると、「積極的になった」が0.8%、「やや積極的になった」が14.3%で、あわせて15.1%となり、あまり影響は受けていないようだ。大手企業においては、新型コロナの感染拡大前から人事制度改革を検討しており、「ジョブ型」もその一環として実施・検討されていることがうかがえる。「ジョブ型雇用」導入に前向きな意見は、「即戦力人材が雇用できる」、「ミスマッチによる退職が減る」など
自由回答で「ジョブ型雇用」に関する意見を尋ねると、以下のような回答が得られた。・企業は即戦力となる人材を採用でき、職務のミスマッチで退職しにくくなるというメリットがある
・すでに職能等級制度の運用が成り立たなくなっており、「仕事」を中心とした仕組みへの転換が不可欠
・まずは「メンバーシップ型」と「ジョブ型」のハイブリッド型の制度への移行を目指す
・欧米的なジョブ型雇用は必ずしもマッチしない部分もあると思うので、日本企業に適したジョブ型雇用の形について是非考えていきたい
慎重派の意見には「業務のブラックボックス化」や「マンネリ化」を危惧する声も
最後に、ジョブ型への移行を慎重に考える意見の一部を紹介する。・長年培われた日本人の気質上、一律でジョブ型雇用を行う状況にはまだ至っていない
・「給与等も成果に応じて変える」という考え方には同意するが、ジョブ型ありきというのはいかがなものか
・専門職に一定のジョブ型雇用を拡大する可能性はあるが、一方で当該業務がマンネリ化、業務内容がブラックボックス化しやすい
・維持労力を考えるとメリットは少ないのでは
・ジョブ型雇用は専門職のイメージが強く、部署異動や管理職昇格の判断に制限をかけてしまう可能性がある
・「与えられた仕事だけをこなせばよい」という捉え方をする従業員が出てきそう
さまざまな面からジョブ型雇用に注目が集まっているが、制度化し運用するには課題も多そうだ。ジョブ型への移行を考える上では、「自社にとって選択できる人事制度のひとつ」として、そのメリットやデメリットをよく検討しながら導入していきたい。