株式会社fruorは2020年9月、「復職後の働き方やキャリアの悩みと、会社に求めるサポート」についての調査結果を発表した。調査期間は2020年8月27~31日で、企業等に勤務し2010年以降に育休から復帰した経験を持つ男女564名から回答を得た。これにより、復職後の従業員が抱える悩みや、会社側に求められる体制などが明らかになった。
6割の育休復職者がキャリア展望を描けず。モチベーションを保つため企業に必要な対応とは

7割が復職時面談を実施するも、キャリア展望を持てた人は4割に満たず

多様な働き方を受容するダイバーシティ経営の浸透が社会課題となるなか、育休復職者はどのような悩みや課題を持っているのだろうか。はじめに、「復職時に会社と面談を行ったか」を尋ねた。すると、「制度としてあり、面談を行った」が46.6%、「制度はなかったが自ら申し出て行った」が23.4%と、合計70%が面談したと回答した。また、「復職後のキャリア展望」については、「しっかり描けていた」、「少し描けていた」と回答した人は合計37.4%にとどまり、6割以上が先のキャリア展望がないまま復職をしているという実態がみえた。

復帰時の面談時の様子を聞くと、「やりたい仕事や働き方の希望を聞かれる事もなく、決定事項を通告される場だった」(女性・正社員・子ども2歳)という声も挙がっており、会社と育休復帰者のキャリアをすり合わせる場として、うまく活用できていないケースもあるようだ。
6割の育休復職者がキャリア展望を描けず。モチベーションを保つため企業に必要な対応とは

多岐にわたる悩みを抱えていても、上司に相談していないという復職者が半数以上に

続いて、「復職後の働き方やキャリアについての悩みや不満」を尋ねた。その結果、最も多かったのは「時間内で成果が出せるか」で53.9%、次いで「時短で給料や評価が下がる」が51.2%、「スキルアップや昇進昇格の機会が遠のいた」が41.1%など、自身の能力と成果を不安視する悩みが中心となった。また「時短なのに業務量が減らない」は30.3%と、3人に1人が感じており、制度と勤務の実態にギャップもあるようだ。

自由回答では、「時短勤務での評価への不満」や「過剰な業務量」、「過剰な配慮によるやりがいの喪失」などの声が寄せられ、働くモチベーションの低下に繋がりかねない様子も垣間見えた。
6割の育休復職者がキャリア展望を描けず。モチベーションを保つため企業に必要な対応とは
復職後の悩みを抱える一方で「悩みや不満を上司や会社に伝えたか」を聞くと、「伝えなかった」が55.1%で過半数を占め、さらに4人に1人は「全く伝えていない」と回答。伝えなかった理由として最も多かったのは「子育て中である事情を考えると我慢すべきものだと思った」で、4割にものぼった。公私混同を気にして、悩みを抱えがちなケースも少なくないと予想できる。
6割の育休復職者がキャリア展望を描けず。モチベーションを保つため企業に必要な対応とは

「柔軟な働き方」や「成果による評価」を望む声が多数。個々の状況に合わせたフォロー体制等のニーズも

次に、「復職後も意欲的に働くためにあったらいいと思うサポートや環境」について尋ねると、「柔軟な働き方ができる制度」(83.3%)が8割以上に。以下、「勤務時間でなく成果で評価する制度や風土」(58.3%)、「家庭状況や希望にあわせた働き方やキャリア設計のための定期的なフォロー」(56.6%)、「自分の悩みや課題についてキャリアの専門家に相談できる場」(47%)などと続いた。制度による画一的な支援だけでなく、個々の状況に寄り添ったフォローや相談の場を希望している様子がうかがえる。

また、「仕事だけでなく、日々の家庭生活や育児をサポートする施策」(44.1%)と、生活面の充足あってこその仕事と考える人も多いようだ。
6割の育休復職者がキャリア展望を描けず。モチベーションを保つため企業に必要な対応とは
仕事と家庭生活の両立をめざす「育児・介護休業法」の改正が、令和3年1月から施行となる。ところが本調査により、復職者は働き方に対する悩みを多く抱えており、それに対応する企業側の課題も多いことがわかった。多様な働き方を選択しながら、やりがいを持って働ける社会の実現に向け、個々のニーズに鑑みた体制の構築が求められている。

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