コロナ解雇は「サービス」「小売」「メーカー」で多く見られる傾向
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて経営不振となった企業が、やむを得ず従業員を解雇する「コロナ解雇」が顕著化している。厚生労働省による2020年6月15日の発表では、新型コロナウイルス感染症拡大のために起きた解雇や雇い止めは、同12日時点で見込み数を含め2万4,660人におよび、経済への影響の大きさを物語っている。このような動きは、サービス業を中心に広がっていると言われているが、実際にはどのような業界で「コロナ解雇」が起きているのだろうか。最初に、コロナ解雇を受けた人が当時勤務していた企業の「業界」を聞いた。その結果、「サービス業」が39%と最も多く、次いで「小売業」が17%、「メーカー」が11%だった。サービス業界は、休業要請を受けた飲食店やインバウンドと関連性の高いホテル、観光業などで大きな影響を受けたことから、他の業界と比べて特に多い結果となった。
さらに、あまり注目されないものの、金融やインフラ、IT、商社等でも解雇されたケースがあり、多岐にわたる業界でコロナの影響が出ていることがわかった。
「パート・アルバイト」に次いで「正社員」も解雇対象に
次に、解雇にあった時の雇用形態を聞くと、最も多かったのが「パート・アルバイト」で36%、次いで「正社員」で29%、「派遣社員」で19%だった。これまで「安定した立場」だと思われていた正社員の解雇率が、派遣社員や契約社員よりも高いことが判明した。解雇を「違法だったと思う」人は2割以下。「会社も被害者」という従業員の声も
また、今回の解雇に違法性があったと思うかを尋ねた。その結果、「違法だったと思う」は15%と全体の2割未満にとどまった。これに対し、「違法だったとは思わない」は53%と過半数を超えた。違法性を感じていない人が多いことから、コロナが経済に及ぼす影響は、「ある程度は仕方ない」と捉える人が多いようだ。・雇用を維持して社員の生活を守るのは、企業の責任だと思うから。(40代男性)
・まだ解雇されるほど影響を受けているとはいえない状況だったので、納得できない部分が大きい。(30代女性)
・契約期間中にも関わらず解雇されたから。(20代女性)
・結果として「契約期間満了」という形での解雇だったが、それ以前は延長するという話になっていたため。(20代男性)
一方で、「違法だと思わない」や「わからない」とした人に、その理由を聞くと以下のような回答があった。
・納得はいかないが、会社の経営状況を考えると仕方ないと思うから。(30代男性)
・解雇は残念だが、会社も世界を震撼させたコロナの被害者だと思う。(40代男性)
解雇後は今後の生活を見据え、「雇用保険の手続き」や「ハローワークへの相談」へ
次に、コロナ解雇にあったとき、どのような行動をとったのかを聞くと、最多だったのが「雇用保険の手続きをおこなった」で49人、次いで「ハローワークに相談」が38人、「コロナに関わる各種支援制度を利用」が24人となった。気持ちを切り替えて、次の仕事や今後の生活のために行動を起こす人が多い傾向にあるようだ。一方で、「解雇を取り消してもらえるよう会社に交渉した」(5人)や「弁護士に相談」(2人)、「労働基準監督署に相談」(1人)など、解雇が納得できずに交渉や相談を持ちかけた人はごく少数だった。
【雇用保険の手続きを行った人】
・当面の生活費に困らない状況になったので、これで良かったと思う。(40代女性)
・無理に次の仕事を探すより、すぐに給付金を受け取れるので、金銭的に助かった。(20代女性)
【ハローワークに相談した人】
・担当者が親身になって相談に乗ってくれ、次の仕事が見つかった。すぐにハローワークに行ってよかった。(30代女性)
・ハローワークに相談することで、解雇の怒りを解消し、今後に目を向けることができた。(30代女性)
・雇用保険の給付金は会社都合の退職なら7日間の待機期間後すぐに給付されるので、相談して良かった。(20代女性)
・ハローワークに相談したことで、次の仕事と再就職手当の受給ができた。(50代男性)
【コロナに関わる各種制度を利用した人】
・テレビでは「なかなか給付されない」との報道もあるが、解雇された時点ですぐにコロナに関する支援制度を利用したところ、早い段階で給付が下りた。(30代男性)
【解雇を取り消してもらうよう会社に交渉した人】
・雇用取り消しには至らなかったが、会社の事情を理解でき、納得できた。(30代男性)
・いくら会社のために働いても、契約社員はすぐにクビになると思った。(20代女性)
・仕事が増えたらまた雇うという形に。言うべきことは言ったほうが良いと感じた。(40代男性)
コロナ禍により業績が悪化し、従業員の解雇を余儀なくされた企業もあるようだ。しかし、従業員の生活を守ることも企業の責任と言える。変化する社会の状況に合わせ、必要な対策を検討するとともに、従業員に対する適切な対応も必要となるだろう。