新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっています。これはおそらく世界史に残る出来事で、その真っただ中を我々は生きています。緊急事態宣言が出され「対人接触を8割減らそう」、「テレワークを7割にしよう」ということで遠隔・在宅勤務になっている方も多いと思います。そこで今回は、コロナ流行時代の過ごし方について産業医からの意見をのべます。
新型コロナウイルス感染症の流行を乗り切るために知っておくべき8ヵ条

正しい知識に基づいて行動を変えましょう

(1)対人接触を減らす
これは「外出しないで家に閉じこもっていなければならない」ということではありません。例えば、誰もいない公園を散歩することはまったく対人接触に当たりません。歩いて行った先で知り合いに出会い立ち話をすればそれは対人接触です。友人を集めて自分の家でいわゆる「宅飲み」をするのはもちろん明らかな対人接触です。

(2)外出の大切さ
人間は「歩くために生まれてきた」ともいわれる動物です。少なくとも1日5,000歩以上は歩かないと肉体的にも、精神的にも、健康に悪い影響がある可能性が大きいです。

(3)会話の大切さ
また多くの方にとって他の人との対話、特に仕事と関係ない対話をするというのは精神的なストレスを緩和するために非常に重要です。ただ、他人と対話することは他人が発する呼気に含まれるわずかな飛沫を吸い込んでしまう危険があります。可能なら風通しの良いところで、マスクを着用して会話する。あるいは電話やTV電話などを利用するのもいいでしょう。

(4)「3密」について
いわゆる「3密」というのは「密集する距離」、「密接した会話」、「密閉した換気の悪い場所」のことを指します。これは、ウイルスの他人への感染のリスクを指定しただけです。ほかにも危険な行為はたくさんあります。例えば至近距離で会話することや、呼吸が荒くなるような行動をとることなどです。一番大事なのは、そのような行動をとらない、ということです。これを「行動変容」とよびます。この行動変容こそが他人に感染させない・自分が感染しないうえで一番重要です。

(5)2メートルの距離の意味
他人と常に1.5~2メートル以上の距離をあけることが、世界中で強くすすめられています。それだけ距離があれば他人からの飛沫が届きにくいからです。例えば買い物に行き、商店などで並ぶ時も意識するといいと思われます。

(6)マスクの効果
熱や咳などの症状が出る2日前頃から他人に感染させる可能性があるといわれています。つまり、「今、元気な私も、実はウイルスに感染していて他人を感染させる可能性がある」ということなのです。そのためマスクをつけることが奨励されています。

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)という公的機関もすすめていますし、オーストリアやチェコのように外出時には義務化されている国もあります。布マスクで構いません。なおマスクは医療機関で使う特別なものでない限り、自分がうつされる危険をほとんど防がないと考えられています。

(7)マスクの正しい着用方法
まずは鼻まできちんと覆うようにつけることが大事です(鼻の穴が出ている状態は「鼻マスク」とよばれ、駄目なマスクのつけ方の筆頭にあげられています)。

次に市販のマスクには表裏があります。意外と逆につけている人が多いです。例外はありますが、耳に掛けるひもがマスク本体の外になる向きでつけるのが基本です。説明書きに記載してありますので裏表を確認してから着用してください。

(8)手洗いについて
ウイルスが自分に入るルートは主に2つあります。ひとつは今まで述べた他人の飛ばした飛沫が直接口や鼻にはいること。もうひとつはドアノブなど人が多く触るところについているウイルスが自分で触った時に手や指につき、その指で目や鼻口を触った時に体内に入って感染するルートです。

後者のルートを防ぐには手洗いやアルコールによる消毒が重要です。何かに触るたび、あるいは顔を触る直前には必ず手洗いをするのが理想です。ただ、実現するにはトレーニングが必要です。せめて、食事の前、顔を洗う前、目がかゆくてこする前などには必ず手を洗うようにしましょう。普通の石鹸で構いませんが30秒洗いましょう。「30秒間」とは、俗に「ハッピバースデイトゥーユー」を心の中で2回フルコーラス歌うくらいの時間といわれています。

最後にお伝えしたいこと

最後に極めて大事なことを述べます。この流行はいつか必ず終わります。そして、そのあと皆さんの日常がまた始まります。時間は我々の味方です。そこまでお互いなんとか乗り切りましょう。


神田橋宏治
合同会社DB-SeeD
日本医師会認定産業医 労働衛生コンサルタント
https://industrial.doctor.tokyo.jp

この記事にリアクションをお願いします!