産業能率大学総合研究所は2019年12月、職場状況や部長の意識についてのアンケート調査結果「上場企業の部長に関する実態調査」を発表した。調査は、従業員数100人以上の上場企業に勤務し、1人以上の部下を持つ部長を対象とし、インターネットを通じたアンケート形式で行われた。実施期間は2019年3月20日~27日。調査結果から、上場企業における管理職の業務・役割の実態が明らかになった。
9割以上の部長がプレイングマネジャーという実情。管理職の「働き方」はどうあるべきか

3年前に比べ「業務量が増加している」職場状況が明らかに

まずは、自身が管理する職場の状況について、3年前と比べて変化した点について質問したところ、「業務量が増加している」が45.5%と最多回答となった。次いで「コンプライアンスのために制約が厳しくなっている」が37.2%、「成果に対するプレッシャーが強まっている」が34.5%という結果だった。
9割以上の部長がプレイングマネジャーという実情。管理職の「働き方」はどうあるべきか

9割以上の部長が「プレイヤー」と「マネジャー」を兼務

次に、管理職という立場にあたる「部長」が、プレイヤーとして果たしている役割は現状でどの程度かを尋ねた。「プレイヤーとしては動いていない」を0%とし、10%刻みで回答を求めたところ、「まったくない」との回答は、わずか4.2%に留まる結果となった。つまり、部長職のほぼ96%もの人が、本来の業務であるマネジャー業務と現場でのプレイヤー業務を兼務するプレイングマネジャーとして稼働している現状が明らかになった。

また、業務内容にも目を向け、加重平均を算出したところ39.9%となった。つまり、部長が抱える業務のうち「プレイヤーとしての仕事」が約4割を占めているということになる。
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実情に反して、組織が求めるのは運営・育成などの管理業務という矛盾

次に、自身が部長として「組織から最も期待されていることは何か」を調査した。すると、「職場運営の方向性を明確に示すこと」という回答が36%と突出して多かった。次いで「長期的なキャリアを見据えた部下育成」が19%、「メンバーに適切に業務を分担すること」が13.7%と続いた。プレイヤーとしての業務をこなさなければならない現状がある反面、組織からは管理業務の遂行を求められており、建前と実情にはギャップがあるようだ。
9割以上の部長がプレイングマネジャーという実情。管理職の「働き方」はどうあるべきか

部長は「部下の育成」と「人事評価」に悩んでいる

最後に、部長としてどんなことに悩みを感じているかを調査したところ、最多回答としてあがった「部下がなかなか育たない」が42.9%。次いで、「部下の人事評価が難しい」が28.3%、「職場または自分の業務量が多すぎる」が24.1%となった。

一方で、「特に悩みはない」の回答も15.8%あり、企業や職場環境によって部長の負担にも差があることが推測できる。
9割以上の部長がプレイングマネジャーという実情。管理職の「働き方」はどうあるべきか
若手社員の離職防止やエンゲージメント向上のために、企業の多くが就労環境や業務の改善に取り組んでいる昨今、「管理側」でありながら実働部隊としての役割を実質的に負っている部長は、本当は、組織の中でどういった役割を果たし、どのような責任を負うべきなのか。経営戦略推進の一翼を担う役職者として企業側から負わされる責務と、こなさざるを得ない実務にきちんと境界をもうけ、線引きする必要があるのではないだろうか。

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